ひろ

鉄砲玉の美学のひろのレビュー・感想・評価

鉄砲玉の美学(1973年製作の映画)
4.3
冒頭の飲食ショットやウサギが餌を頬張るショットから怠惰な生活を批判的に映し出して、鉄砲玉として宮崎へ行った渡瀬恒彦の生活そのものを嘲笑ってるようなのが面白い。

帰宅した渡瀬恒彦が、ウサギに餌をやったら太って、ウサギが売れなくなるという事で、女を叱り、そこから喧嘩になる83カット目。画面手前でウイスキーを飲む渡瀬恒彦にピントは合ったままで、画面奥の女はピントが合っていない。女にピントが合うのは、渡瀬恒彦が立ち上がって画面から消えた瞬間で、渡瀬恒彦との会話中はピントが一度も合わない。これが良い。
それに対して193カット目で、クラブのマスターからシャンパンを出されて、渡瀬恒彦がシャンパンは要らないと断る時のピント送りの素晴らしさ。

103〜107カットの飛行機とハジキのカットバックが面白い。
九州に着き、ホテルの部屋で鏡を前に、傍若無人に振る舞う練習をする125カット目のカッコ良さは出色。

川谷拓三に追われ、店に駆け込んでトイレに急いで入って、財布の中身を確認してる時に、女性がトイレのドアを開けて入って来ようとするのが最高。
鍵を締めるのも忘れるぐらい切羽詰まってるのが一瞬で分かる描写。

52カット目。渡瀬恒彦が焼きそばを調理したフライパンをそのままテーブルに持って来て食べるのを見て、『赫い髪の女』を思い出した。調理したまま食べるのを映画で目にするのはとても良い。
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