
アイルランドにはいつも音楽があふれている。街角に、パブに。荒涼とした海岸や丘陵にさえ。家族と、仲間と、見知らぬ人と、そして一人の時も……。長きに渡るイギリスの支配に飢饉、北アイルランド紛争など、激動の歴史を生きてきたこの島の人びとは、ユーモアと皮肉まじりに、自由への抵抗や日々の悲哀を美しい旋律にのせて、はるか昔から歌いついできた。その土壌はU2、エンヤ、ザ・クランベリーズにシネイド・オコナー、近年でもホージアやフォンテインズD.C.など世界的なアーティストを生みだしている。 イギリスから部分的な独立を果たしてから100年あまり。国境が一つの島を北と南に分断し、今なお植民地時代の影が残るなか、アイルランドではフォーク・リバイバルと呼ばれる新たなムーブメントが起きている。担い手は、アイリッシュ・フォークの伝統を受け継ぎながら、R&Bやヒップホップ、パンクなど多様なジャンルから影響を受けた新しい世代のミュージシャンたち。宗教や信条はそれぞれに違えども、彼らはみな等身大の感覚で祖国の文化や言語に向き合い、社会の矛盾を鋭く見抜きながら、まっすぐに未来への希望を歌う。