垂直落下式サミング

ONE PIECE ワンピース THE MOVIE エピソード オブ チョッパー プラス 冬に咲く、奇跡の桜の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

2.5
チョッパー加入のエピソードは、原作でもそれなりに短くまとまっているから劇場版にしやすいはずだが、こんなに鈍重でモッサリしてたっけか。映画シリーズのなかでは評判いいから楽しみだったけど、ぜんぜん面白くなくてビックリした。
短くまとめたことによって、持ち味が消えたアラバスタ編の劇場版とは、また少し違う。原作のほうにもあったけど、熱さと勢いで見過ごされていた倫理的な問題点みたいなのが、ハッキリ見えるようになってしまっている。これはマズいね。
このエピソードだけを単品として作り直してどうなったかというと、無免許ヤブ医者のDr.ヒルルクという男が、いつも国中のみんなに迷惑かけてたけど、おなじ鼻つまみもののチョッパーにはそれなりに優しくて、そんで最後はいいはなしっぽく死んで、息子のように可愛がった弟子の旅立を見送るように最後に都合よく桜が舞う…って感じ。
光月おでんの死に様をみた後だと、「本当の死とは人に忘れられた時さ。」っては、人としての誠実さを欠いた発言に思える。やるだけやったから忘れてくれて結構だって見栄を切り「煮えてなんぼのおでんに候!」やっぱこっちの方が好き。
ヒルルクが、準主人公みたいな扱いのせいで、原作ではいいはなしだと思った名言や名シーンが、共感しづらい欺瞞として前のほうにせり出してきてしまっている。コイツのやってることって、セカンドオピニオン無視の腕のないブラックジャックなんだもん。
あのジジイは、チョッパーの精神的なメンターとして出てくるからよかったのであって、こいつの人生に焦点をあて過ぎると、最低辺のロクデナシの一生をこちらが許容する度量が必要になってくる。申し訳ないが、今週の俺がいくらスーパーでも、そんな余裕ない。
ルフィの土下座もなんかイヤだった。歓迎されていない風だから、最初はケンカ腰な振る舞いをするけど、それをビビに窘められて反省し、仲間のために下げたくない頭を下げるってのが、チンピラ小僧の人間的成長を感じられる素敵なシーンなのに、こんだけ強いうえに人間的に完成され過ぎてたら主人公として魅力ないよ。
名シーン「うるせえ!いこう!」も、意外性と大ゴマの迫力がいいのであって、映画っぽい見せ場で音楽と一緒に盛り上げるみたいなのされると萎えるでソワール。
作画もちょっとな。エースが死ぬらへんのタッチだから外連味が弱くて、これ僕あんま好きじゃないです。
劇場版シリーズのなかでは、けっこう名作の部類の扱いだから、こんな満足度が低いとは想定外。