丑寅

壬生義士伝の丑寅のネタバレレビュー・内容・結末

壬生義士伝(2002年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

男にはグっとくる話であり、女性からはツッコミがきそうな話ではあります。「そこまでして裏で家族のためにがんばるなら、そもそもなぜ苦労をかけるような脱藩をしたんだ!」といったかんじでしょうか笑 しかしそれは幕末に生まれていない我々には理解しがたい価値観のなかで生きた人々の話でしょうし、世のため、人のためを思えばこその、ひとりの武士の決断であったのでしょう。

新選組隊士たちの、一旗あげようとアウトローたちが集まった血の気の多い雰囲気がとても良かったです。きっとリアルにあんな連中だったんだろうなぁと思わされます。吉村貫一郎演じた中井氏の硬軟切り替わる演技もなかなか良かったです。
殺陣もなかなかかっこよく、前半の試合や私闘でのヒリヒリした緊張感のある戦いはテクニカルな剣裁きを堪能でき、後半の鳥羽・伏見の戦いでは雄たけびと血しぶきが舞う熱い戦いが楽しめます。
しかし南部藩蔵屋敷に流れ込んでからのくだりがあまりにも長かった。かなりくどかった印象があります。その点だけがマイナスポイントでした。

名誉と忠義そして金銭のような物質主義を象徴するようなものを遠ざけることを美徳とした当時の武士道において、劇中の吉村がみせた生き方は、新たな形の武士道であると思わされ、斎藤一の心さえも動かすこととなるところがグっときます。最後に斎藤が病院から連れ帰る小さい孫に対し、「武士ならば、自分の足で歩け!」と鼓舞激励したシーンは、明治になって武士が消えた世であっても、武士然と生きることが男には必要なんだと強く思っていることがわかる場面でした。それはきっと吉村の生きざまも強く彼の心に影響しているんだと思います。
丑寅

丑寅