丑寅

キングダム・オブ・ヘブンの丑寅のレビュー・感想・評価

キングダム・オブ・ヘブン(2005年製作の映画)
4.2
とにかくサラセン軍がかっこいい。サラディンがかっこいい。これに尽きる映画でした。しかしそれだけに、西洋人が再解釈しようとした「イスラム」という印象もまた拭えないというかんじでしょうか。たしかに中世の時代はヨーロッパよりもイスラムのほうが文明度は高かったでしょう。イスラムで証拠と証人による裁判をしていた頃に、ヨーロッパでは神の名のもとに決闘裁判をしていたのですから。主人公はフランスの鍛冶師なのでどっちかに場面が偏るのはしょうがないとしても、少しイスラム側に神秘性をもたせすぎたという印象は強いです。イタリアのメッシーナから十字軍遠征で出発したあたりか、うろ覚えですが、「異教徒は殺しても殺人にはならない」と呼びかける修道士が印象的でした。きっとあの時代には両陣営でそういう運動が盛んだったのでしょう。そしてそれは今現在でも続いている地域がある。その現実をつきつけられるシーンでした。火葬のシーンも含め、宗教のもつ欺瞞性を突っつく場面はいくつかありましたが、決して宗教批判映画ではない。私は宗教による争いがどれだけナンセンスであるかという解釈をしました。しかしそれでも、ラストのシーンでバリアンが放った「エリサレムの価値とは?」というサラディンへの問いに対する答えは、宗教による争いに結論は出ずとも、シビれるようなかっこよさがありました。結局、フィクションであるとはいえ、命をかけた戦いってドラマを生んでしまうんですよね。あと音楽めっちゃいいです。(雑
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