Nakanishi

シッコのNakanishiのレビュー・感想・評価

シッコ(2007年製作の映画)
4.1
アメリカの保険制度に迫るドキュメンタリー。無保険者が多い国という認識でしたが、保険加入者に焦点を当てています。本作は日本ではあまり有名ではないみたいなのですが、健康保険が充実している日本在住の人にこそ見て欲しいです!

公的保険が(ほぼ)ないのに民間保険にも入れない。その上、病気のリスクが高い人ほど加入しにくく、加入できても治療が受けられない…という本末転倒な状況のアメリカ。

ちなみに、この映画の公開から数年後に国民皆保険に近い制度をオバマ大統領が創設します(通称オバマケア)。主に無保険者に対する政策でしたが、医療制度の改革があったのはとてもいいことだと思います。しかし、マイケル・ムーアはオバマケアには批判的だったようで、また、保険会社の中でも中小企業の経営が芳しくなくなるなど、色々と問題点もあったようです。

作品としてですが、他作品同様シリアスな題材をコミカルにシニカルに描いています。

治療をすると医師や保険会社に損失(患者への補償)が発生するアメリカ。治療をすると医師に利益(報酬)が発生するイギリス。不思議ですよね。極端に描いてるのは分かってるんですが、こういうところがマイケル・ムーアはうまいです。

また、一貫してブッシュを嫌っている点も面白く、スターウォーズのあらすじ風の演出などは思わず笑ってしまいました。編集も皮肉たっぷりで鼻につくんですが、それが彼の持ち味ですね。

しかし最後はうるっと来てしまい、胸が熱くなりました。9.11の救助ボランティアの人たちとキューバの医療機関に行くんですが、そのシーンがとても良かったです。批判するだけではなく、きちんと行動するところも。善し悪しは置いといて、本当にすごいと思います。


華氏911やボウリング・フォー・コロンバインは歴史に残るレベルの重大事件を取り扱っていましたが、本作は医療保険という生活に身近なテーマなのでスッと入ってくると思います。とてもおすすめです!
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