ポンコツ娘萌え萌え同盟

執炎のポンコツ娘萌え萌え同盟のレビュー・感想・評価

執炎(1964年製作の映画)
4.0
浅丘ルリ子魂の一作。
順風満帆そうな若い夫婦は何故死ぬことになったのか?
結末収束形の物語構造に映したのは男と女と戦争の影響。
特に女の姿を映したのは、かの名作ヴィットリオ・デ・シーカ「ひまわり」もそう。だけど「執炎」は「ひまわり」は全く真逆の性格をした作品だと感じた。
「ひまわり」が戦争によって引き離された男と女なら(戦後)、「執炎」はむしろ男が徴兵に捕われることで、より浅丘ルリ子の演じるきよのは執念と情感と共に銃後の中、愛に生きていく。そしてまた、愛に死んでいく。
舞台は長閑な山と海の土地。機関車が通り戦争の被害が物理的には見え辛い。美しいロケーション。雪が降り積もる場面もまた美しい。だけどそれでも生活、人の心に戦争の影が忍び込んでくる。

兎に角浅丘ルリ子が演じるきよのが絶妙なハマり役。喜怒哀楽から執念や情念が入り交じる女の表情。
きよのという女を描くのに対してこれほど適任者はいないだろう。
終盤になると更にクローズアップ、露光、演出等色々用いて、ちょっとやり過ぎではあるから、鑑賞に疲れるけど映像ときよのの感情のリンクが素晴らしい。

映像面では物語における橋の上の汽車というオブジェクトの立ち位置と使い方。
度々汽車が出てくる映画なのだが、最初は人が戻ってくるアイテムから、夫を連れて行く鉄の物体。別れ。汽車を脇に通り過ぎるところでは愛の芽生える場所、対比が行われる場所から、蘇る場所と同じ場所なのに物語につれて性格が様々な使い方。
照明では、やはり蠟燭だろうか。終盤のある場面の蝋燭の明かりは哀燈のよう。浅丘ルリ子の表情に明かりを当ててるのに。別角度、背面から見ると表情と正反対に真っ暗。