執炎の作品情報・感想・評価

「執炎」に投稿された感想・評価

ロケーション撮影で、海、山、雪、月、花、男のふんどし、藁ぶき屋根の家並、能楽など、つましくミニマムな日本的美観をモノクロのフィルムに収めている。
本作は、広い意味での反戦左翼映画であるが、考えてみれば「美しい日本」というものは、なにも右傾的な復古国粋主義の専売特許というわけではなく、どんな主張の作品であろうとも、それを撮ることは悪いことではない。
なのだが、映画としてはなんとも言いがたい作品だった。序盤だけかと思ったら、けっこう中盤の方まで状況説明のナレーションが続いて、頭が痛くなってしまう。ヌーヴェルバーグ影響下の作品によくありがちな、原作をあまり工夫なく映像に置き換えた「みて読む小説」の域を出ない。
やたらとオーバーラップを多用してシーンとシーンをクロスフェードさせるが、これも普通に観にくいので感心しない。今や素人編集のホームビデオでもダサすぎて使わないからなあ、正直キツい。
印象的な流れるような横移動や、町中を歩く人物をはるか頭上からとらえた引き画、列車をとらえる視点が変わっていく目を見張るショットなど、素晴らしい情景は複数あるものの、それが連続した意味をもって語られない。私があまり好きくないタイプの映画だ。
美術的ではあるが、演劇的でない作品だと感じた。
本作の見所は、やはり浅丘ルリ子の美しさ。若い頃から狂おしいほどミステリアスな雰囲気が持ち味の女優だったのだと、さらに大女優になってからの彼女とは、また違った表情を知ることができた。
それはそうと、戦争だからといって国民の人生を犠牲にさせて国家に尽くさせるのは、最悪な時代だ。
ここから下はインチキ臭い国民の戯れ言だと思って読み飛ばしてくれてかまわないが、たとえ戦争になろうが最も大切なのは国民であって、既存の国家体制の存続なんざ些末なものだ。首相なり何なりの首をすげ替えることで、多くの国民が生き残れるなら、喜んで差し出すことにしよう。
戦争になんて負けたっていいし、国家なんて滅んでかまわない。自分と国が秤にかけられるなら、喜んで国の方を切り捨てよう!コレが大事だ(国賊)
夫が戦死してさめざめ泣く芦川いづみの後ろ姿をみるルリ子の表情が同情や哀れみのそれじゃなくて、決断の焔立ってる不気味さ。鉄橋の奥行きのこちらとあちらだけでなく、鉄橋を挟んだ山と海もある多層性に、ふたりだけの逃げ場が象徴的過ぎるロケーションの素晴らしさ。好き。
村の因習を超えて結婚し、奇跡的に夫の怪我を全快させ、社会と離れて引き篭もるなどのことを、軽々とやってのけるほど強い人でも国から赤紙がきたら壊れてしまうんですね。それほど戦争は当時の人たちにとって抗えないものでした。いやなもんです。
7年前1人の女が1人の男を慕って命を絶った、これは情念の火を燃やし短い一生を終えた1人の女の物語である

海に住む網元の息子は20歳を迎え兵役目前、そんな時山に住む平家部落の末裔の娘と出会う、3年の兵役を終え、紀元2600年の年(1940年)に2人は晴れて結ばれ幸せな日々が続くが、、、

前もってその死を明示することで劇中の何の疑いもない幸福なシーンでさえもその影が付きまとう、来るべき悲しい結末を思わずにいられない
一度は戦争に行くも負傷し帰って来る夫、片足切断の危機、生死の境を彷徨うも必死の看病で全快させる、しかし片目を失った者も再び戦場へ戻されたという話も出て来る
この辺のエピソードは清作の妻を連想させる感じ、あの時切断していたら、、、みたいな馬鹿なこと考えちゃうよね

浅丘ルリ子映画出演100本記念作品の名に恥じぬ力作と熱演、正直浅丘ルリ子の出演作は数本しか見たことないんだけど、その美しさと情念一見の価値はありました

あえて注文つけるなら少し尺が長いかなと、もう少しコンパクトに出来そう、あとは度々入るナレーション、丁寧にわかりやすくていいんだけど、ちょっと説明しすぎかなと
全てを語らずとも語ってるみたいな演技、演出で納得させて欲しいなぁと思うところも少し
いわゆる日本ヌーヴェルヴァーグの一員として、その奇抜とも言えるカメラワークや、ズームアウト等があるものの、2時間の尺ではやや鬱屈としている。

陸橋の捉え方はこんなことされたら、二度と他の監督は撮れないとも思えるほど強烈で、傘がヒラヒラと舞い落ちるショットも素晴らしい。

季節とりわけ、秋から冬、この季節はフィルムに刻まれやすく、とりわけ情感を漂わせるには最適なのだが、それがフィルムを湿らせてしまう恐怖もある。邦画はとりわけこの節がある。
舞台装置としての陸橋が優秀すぎる。
列車!線路!俯瞰で映される村!
傘が落ちていくシーンとかたまらんっす。

夜のトンネルでずぶ濡れの浅岡ルリ子が村のおっちゃんの顔面をパンチするとこは怖いけど笑ってしまった。
Hero

Heroの感想・評価

4.6
闘う男と待つ女、戦争責任の所存を故意的に曖昧とし被害者としての立場を主張する、悪いのはあくまでも軍部であり我々日本人は過去と決別し新時代に向けて前に進もうと都合がいいにもほどがある論理を貫く1952年のGHQによる検閲終了後によくありがちな戦争に引き裂かれる男女を描いた悲恋モノではあるのだが、もう浅丘ルリ子の美しさとその狂女っぷりが突き抜けてる。プロット的には増村の『清作の妻』なんかが思い浮かぶが、想っていても夫の前ではそれを行動に移せない一歩下がって控えめなそれでいて内に隠す芯の強さと凜とした佇まい、イタリア留学を経て“情緒”という優美で他愛的な敗北と犠牲の上に成り立つ抑制された愛の美しさを日本の心を失ってしまった増村には描けない(でもこれを綺麗だとか美しいだとか思ってしまうのが日本の悪いところでもあり、それを主張するために敢えて粗野で利己的なあるがままの欲望を曝け出した増村が描く非現実的で超喜劇的な人間像も嫌いじゃない)これぞなもはや現代が失った古き佳き大和撫子の姿。それでも零れ落ちる夫への愛が能面付けての狂喜乱舞であり、オーバードーズな心神喪失とくりゃ泣きますよそりゃ。女と階段があれば映画が撮れるみたいな名言があったような気がするが、この作品を観ると女と線路があれば映画が撮れると言いたくなるほど多くの映画的意図を内包するその魅力をこれでもかと魅せつけられる、あの線路でのキスはエドワードヤン『カップルズ』の映画史上最高のキスに匹敵する。広まれこの映画。
okapy

okapyの感想・評価

4.4

このレビューはネタバレを含みます

何度も出てくる電車が通り過ぎるあたりの一連のシークエンスが美しすぎる。オヤジをぶん殴るシーンがちょっと違うかなぁと思ったけど、傘が飛ばされるシーンなんかは素晴らしすぎて涙が出る。線路と電車ってなんでこうも映画の中に入れ込むと本来それが持つ役割以上の大きな効果をもたらすのだろうか。僕自身が作品を評価するにあたって必要不可欠な演出と言わざるを得ないくらいそれらが映画に厚みをつける。線路や電車は映画のためにあるのか。時が経ったらもう一度見なければならない。
aMi

aMiの感想・評価

-
課題作品として鑑賞

昔の邦画もいい
女性の美しさ儚さ強さ執着心…
色々考えさせられる
砂場

砂場の感想・評価

4.3
監督:蔵原惟繕、主演:浅丘ルリ子、伊丹一三(十三)他
戦時中、最愛の夫が徴兵に!無事を祈る妻の強い愛情、、というと普通の映画っぽいけども浅丘ルリ子が演じると純粋な夫婦愛なのにインモラルな感じがするところが最高で最狂!
海や山を疾走する浅丘ルリ子のしなやかな動きと、蔵原惟繕のモダンなカメラワークが暗い話をスタイリッシュな印象にしている。何度も見返したい傑作だ。
>|