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執炎のyusukepacinoのレビュー・感想・評価

執炎(1964年製作の映画)
3.7
平家部落と戦争。戦争の招集令状により度々引き離される男女。執炎のタイトルそのままに情炎のように燃え上がる二人。待つ女はいつ帰ってくるかわからない相手をひたすらに想う。
監督藏原惟繕、脚本山田信夫、音楽黛敏郎という名手により手掛けられた加茂菖子の同名小説を原作とした初めての映画化作品。これだけの顔触れに加えて助監督に神代辰巳がいる豪華さもさることながら撮影を担当した間宮義雄の職人技が光っており列車が走る鉄道橋で抱き合う二人や海岸での引きからの海で泳ぐ瑞々しい浅丘ルリ子を映すカメラに雪降る町を捉えた俯瞰ショットなど印象に残るものが多くあった。
主演の浅丘ルリ子が体当たりの演技でこの難役を見事にこなしていて彼女の名演の1つではないかと思わせられる。
一方で相手役の伊丹一三名義の頃の伊丹十三はゴツゴツしていて彼女と不釣り合いな印象を受けるが浅丘ルリ子の引き立て役としては悪くないように思う。
あと、彼らとは対照的に抑えた演技ではあったが芦川いづみも確かな存在感を示していた。
終始重々しい空気が流れて暗く、オープニングシーンでラストまでの展開は読めるが二人の背景など興味深く、演出もそうだが芸術度の高い作品に仕上がっていて映画としての満足は高かった。

しかしながら何度か入る鈴木瑞穂によるナレーションは場面によっては蛇足だったかも知れない。
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