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危険な関係のnanaのレビュー・感想・評価

危険な関係(1959年製作の映画)
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ピエール・ショデルロ・ド・ラクロが1782年に発表した書簡体小説をもとに、ジャンヌ・モローとジェラール・フィリップ主演で映画化された作品。
ジェラール・フィリップの甘いルックスはもちろん、今作で最初に姿が映った時のそのスタイルの良さにも驚きました。
出ているだけで画面を支配するようなスターふたりに、全編ジャズが流れることで、とてもスタイリッシュな作品となっています。

映画や小説などでは奇妙な夫婦関係・恋愛関係が時折描かれることがあります。
家の中で夫婦がどんな営みをしているかはそれぞれの自由であり、他人が知る必要がなければ文句を言う権利もないでしょう。
とはいえ今作の場合、その夫婦の愉しみに巻き込まれた人がいるのでちょっと気の毒ですが。

今作は冒頭、監督自身が出てきて観客に向かって語りかける前置きがありました(そこからのチェス盤を使ったオープニングクレジットもお洒落!)。
この監督が第四の壁を越えてくる幕開けは斬新なものに思えたし、1959年の男性監督の作品で「男が遊びまわればプレイボーイ、女が遊びまわれば淫乱呼ばわり、それに反発する女性の物語です」といった監督の言葉が出てくることは現代的に感じます。

ジェラール・フィリップは今作が公開された1959年に亡くなっています。
彼が40代、50代、60代…と生き続けて、歳を重ねるごとに更に魅力的になっていく様を見たかったと思う。
物語自体は下世話な恋愛模様ですが、この物語を最後に亡くなった彼のこと、そしてこのジェラール・フィリップ特集プログラムを最後に営業休止となった名演小劇場で観たこともあり、鑑賞中はどこか寂しい気持ちになりました。
それでも、例え何があろうともまっすぐ凛と前を向き己の道を行く、ラストのジャンヌ・モローの姿は目に焼き付いています。
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