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乱暴者のFancyDressのレビュー・感想・評価

乱暴者(1952年製作の映画)
4.5
メキシコ時代の一本である。

鶏が本作でも三度登場する。ブニュエルにとって鶏はやはり、重要な要素であると、今頃、私は気付いた。やはり、何作か見てみないことには、私はバカなので、いままで気付かなかったわ。

ちなみに、聖書に、ペトロの三度の否認という話があるのね。そこに、鶏が出てくるらしいね。キリストの弟子ペテロがキリストを三度否認した時に鶏が鳴いたという話ね。

多分、そのへんを理解していると、ブニュエル映画を、ますます面白く感じれるんだろうな。

そして、屠畜場と肉屋が登場する。

もうそれだけで、殺人の匂いがするよね。

だいたい、肉屋が出てくる映画は、殺人映画なんだよ。

しかし、本作は、メロドラマでもある。

本作のあらすじを少し書くとこうだ。↓

集合住宅の家主は、借家人たちへ立ち退きを迫るが彼らの抵抗にあう。

そこで、家主は、屠畜場に勤めている腕っぷしの強いブルート(この名前は乱暴者という意味を持つ。)を手懐け、借家人たちのリーダー的存在の男を脅すように言いつける。

そして、ブルートは、その男を脅し一発殴っただけだったが、腕っぷしが強いので、誤って殺してしまう。

その後、ブルートは、他の借家人たちに復讐され、逃げて、たどり着いた家が、自分が誤って殺した男の娘が住んでいる家だった。父親を殺した男だと知らない娘は、肩に釘が刺され負傷したブルートの傷の手当てをしてやる。

そんな、娘に、ブルートは恋をするわけだが、、、。

そこから、本作はますます面白くなるのだが、ここでは、その後のあらすじは書かない。

本作には、どうみても認知症の老人が出てくるのだが、そのディテールの細かさ(例えば、食べ物をベッドのシーツの下に隠すあたりとか。まさしく、認知症老人の行動なんだよな。)が実にリアル過ぎて、面白かった。w

そして、ブニュエル的、官能描写にやられた。ブニュエルってフェティシズム描写がやけに上手い。認知症の老人に、欲求不満の人妻が、指に着けた酒を舐めさせて、「酒と指とどっちが美味しいの?」というシーンがあるのだが、私は、もうそこで唸ったよね。絶妙のタイミングで、ブニュエルのフェティシズム的エロス描写が炸裂するんだよなあ。w

本作には、いわゆるブニュエル的なシュールな描写はないのだが、とても面白い見ごたえのある一本だった。
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