Koshi

風と共に去りぬのKoshiのレビュー・感想・評価

風と共に去りぬ(1939年製作の映画)
4.0
    「明日は明日の風が吹く」

     拝啓『風と共に去りぬ』の鑑賞経験がある方へ
 本作の上映時間に大きな衝撃を受ける人は多いのではないか。それもそのはず、なんと231分の超大作となっているのだ。家で観る分にはまだいい。物語の途中でも「ちょっと待って」ができるから。しかし、もしあなたが劇場へと足を運んだとすればどうだろう?『風と共に去りぬ』でしか味わえない映画体験があなたを待ち受けている。

 映画館で本作ほどの長尺作品を私は初めて観た。映画を2本連続で鑑賞した感覚に限りなく近い。午前10時に映画が始まり、終幕が14時30分というとんでもない長丁場を私はどのようにして乗り越えたのか。というか、お昼ご飯はどうなったのか。この日の私は随分と思い切ったことをした。映画鑑賞の大親友をお昼ご飯として見てしまう日が遂にやってきたのだ。この日は私の「ポップコーン記念日🍿」。私のお昼ご飯がポップコーンになった日のことは一生忘れない。このような本作でしか味わい切れない圧倒的な上映時間。あなたもぜひ1度味わってみてはいかが。

【物語の概要】

 古き良き時代のアメリカの象徴とされる南部が物語の舞台だ。北部との戦争によって、南部の輝きが徐々に崩れ落ちていく様を前後編に分けてじっくりとみせてくれる。変わりゆく時代の狭間の中で、たくましく明日に向かって生き抜いた女性たちの半生を見事に描き切った戦前の超大作である。南北戦争をきっかけに揺れ動くスカーレット、レット、アシュレー、メラニーといった4人の恋愛関係の動向にも最後まで目が離せない。 

【本作の魅力】

 オープニングで流れる音楽から一気に『風と共に去りぬ』の世界へと引きづり込まれる。それほど魅力的な音楽が私たちの耳を楽しませてくれるのだ。そして、ゆっくりと壮大に「Gone With The Wind」のタイトルが大スクリーン上に映し出される。これが最高におしゃれすぎる。

 紳士と淑女が織りなす大人の恋愛ではなく、紳士・淑女になり切れない男女の恋愛を描いているところが興味深い。お互い素直になりきれず、2人の気持ちは時が経つにつれてすれ違うばかり。本作を観て、大切な人に対してもっと素直になることの重要さを思い知らされた。自分の正直な気持ちを包み隠さず見せられる相手が、結婚相手として1番ふさわしいのではないか。スカーレットとレットを反面教師として、気を付けて生きていきたい。

 スカーレットの乙女心を攻略するのはかなりの難題だ。『ときめきメモリアル』のような恋愛シミュレーションゲームに登場すると、99%「失恋ルート」で埋め尽くされているんじゃないか。アシュレーへの未練があれだけ根強く残っているのは異常としか言いようがない。

 ただ、アシュレーも悪い男だよね。スカーレットから「愛してる」と告白された時に、「俺は愛していない!」とキッパリと言ってあげてればいいものの‥‥。こんなことを言いながら、アシュレーの気持ちも分かってしまう自分がいる。スカーレットよようなものすごく可愛い子に「愛してる」と言われたら、嫌な気はしないよなあ。なんて。

【私の1番印象に残った場面 〜スカーレット・オハラの魅力と共に〜】

 スカーレットのことを物語前半では全く好きになれなかった。完全に悪役令嬢ではないか?彼女が主人公で本当に大丈夫?と心配になっていたほどである。しかし、物語が進むにつれてスカーレットに対する印象が随分と変わってくる。特に、物語前半のラスト場面で私の中での彼女に対する印象はガラリと変わった。スカーレットの強さに胸を打たれたのである。そこからというもの、辛い現実に立ち向かう心の強さを持ち合わせた彼女にどんどん引き込まれていく。

 物語後半のスカーレットは、どんなことをしてでも貧乏な目には遭いたくない。その思いで周りからの評判を気にせずになりふり構わず激動の時代を生き抜いてきた。この当時にしては、強い心を持ちすぎていたのかもしれない。「お金があるところにスカーレットあり」。そう言われてもおかしくないほど、スカーレットは自らの強みを最大限に活かして、たくましく生きていくのだ。

 私が1番衝撃を受けたのはスカーレットが、脱走兵を撃ち殺すシーンだ。「私は人殺しね。今は考えない、明日考えましょう」と言えるスカーレットの強さが眩しい。本当に明日を生きるためには何だってするという気概を感じるシーンであった。ものすごいな、スカーレット!!!

 このシーンは、映画館で鑑賞したとき目がバチッと覚めたほど衝撃的なシーンであったことをよく覚えている。そしてここから後半の怒涛の展開に目が離せなくなっていった。前半よりも後半が群を抜いて面白い。後半の話でようやく主人公のスカーレットの株が上がっていくのである。映画館で本作を鑑賞することができて本当に良かった。ありがとう、午前十時の映画祭。

【終わりに】

 とてもじゃないけど、本作が戦前の1939年に上映された作品だとは思えない。数え切れないほど様々な作品でオマージュされ続けてきた不朽の名作の偉大さが「時代と画面」を超えて観るものに伝わってくる。

 個人的に好きな『風と共に去りぬ』オマージュ作品は、『セーラームーン』の第31話である。ルナに恋するネコが登場するのだが、その名前が「レッドバトラー」。他にも登場人物のセリフにさりげなく「風と共に去りぬ」を入れてきたりと観ていて非常に楽しくなる。この回は無印セーラームーンの中でも、1・2を争う抱腹絶倒回なので非常におすすめだ。名画を鑑賞すると子供の頃に観ていた懐かしい作品であっても、大人の楽しみ方ができる。これだから名画巡りの旅はやめられない。鑑賞後に他作品で再会できる喜びを体験できるのは、いまを生きる私たちに与えてくれた1つのプレゼントである。

【名シーンたち】

スカーレットとレットの初対面シーン

https://youtu.be/lrhNPS4nbmQ

(【YouTube】Movieclips 「Gone with the Wind (1 / 6) Movie CLIP - Scarlett Meets Rhett (1939) HD)

スカーレットとレットの掛け合い

https://youtu.be/M4-DIldIX6U

(【YouTube】Movieclips 「Gone with the Wind (1 / 6) Movie CLIP - You Need Kissing Badly (1939) HD)


【関連作品】

『美少女戦士セーラームーン』(1992) 第31話「恋されて追われて!ルナの最悪の日」
脚本 : 隅沢克之
演出 : 幾原邦彦
作画監督 : 伊藤郁子
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