Koshi

フォードvsフェラーリのKoshiのレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.1
「完璧なラップという景色」

【はじめに】
 めちゃくちゃ面白かった。これが実話であることが驚きだ。レースの場面は、おもわず身を乗り出してしまうほど迫力があり、目の前の光景に惹きつけられてしまう。盛り上がること間違いなしのレース場面が盛り沢山で大満足であった。フォードvsフェラーリの白熱の闘いは、観る者の心の導火線を燃やし、アドレナリンまみれにさせてくれるはずだ。

【物語の概要】
 本作は盛り上がりが2つある。どちらもレースであることに変わりはないのだが、①ル・マンのフォードGT40のドライバーを賭けてシェルビー&マイルズのコンビがフォード社に挑む話。そして、②1996年ル・マンの本戦でのマイルズvsフェラーリの最速の戦いである。どちらも甲乙つけ難いほど素晴らしい戦いであった。

 本作はドライバー&エンジニアvsスーツ組 (上役たち) の物語でもある。スーツ組のしたたかさや強引なやり方には、腹が立ってしまうほどだ。平気で嘘までついて、シェルビーやマイルズの邪魔ばかりする。スーツ組の横やりが本当に邪魔でしょうがない。フォード社内での攻防がこんなにも繰り広げられていたとはまったく知らなかった。このル・マンの舞台裏の様子もかなり面白く、非常に楽しめた。

【本作の魅力】
 カメラワークが最高で、レースの臨場感がこれでもかってぐらい伝わってきてアドレナリンが溢れ出た。レースシーンでのカメラワークが、レースの臨場感を見事に捉えていた。特に、ドライバー目線の映像は迫力満点である。

 ル・マンは常に死と隣り合わせのレースなんだなということが本作を観るとよくわかる。命懸けのモータースポーツである。前を走っていたクルマが事故ってしまったら、後続車までも巻き込まれる危険がある。しかも時速250kmで走っているときに、事故車が目に入ると、ハンドル操作を誤り自らも事故ってしまうことも多いだろう。動体視力が鍛えられていなかったら、絶対に出来ないスポーツだ。なにせ、24時間も走り続けなければならないのだから、精神力も体力も必要。ル・マンのドライバーたちは、ストイックすぎるよ。 

 雨の中、しかも夜間のレースになると、フロントガラスが雨で見えにくくなり、夜なので視界もかなり暗くなる。そして、地面が濡れているので、タイヤがスリップする危険すらある。こんな状況の中でも、コーナーギリギリを狙って勝負をするドライバーたちの勇姿にゾクゾクさせられた。ドライバー目線で映像を見せてくれるので、夜の雨の中での視界がどんなものなのかを体感できるのがいい。そして、恐ろしい。こんなにも視界が見えにくい中で彼らはあれだけのスピードを出して走っているのか、と。

【好きな場面】
 シェルビーが、ル・マンでフェラーリに勝って優勝するためには、どうしてもマイルズをドライバーにしなくてはならないということをフォード2世に直談判する場面がお気に入りだ。

 GT40にフォード2世を乗せてシェルビーが元ル・マン優勝者の走りを体感させるシーンなのだが、このときのフォード2世の反応に笑ってしまった。かなりのGがかかっていたはずだ。こんなにも凄いクルマであるとは思っていなかったようで、驚きのリアクションの連続であった。GT40の走りを体感したフォード2世は、笑い泣きながら「先代にこの車を一度でいいから見せたかった。」と漏らす。このシーンは感動的であった。また、シェルビーがフォード2世に持ち掛けた取引条件もマイルズに全てを懸けているということが伝わってきて、胸が熱くなったことよ。

【最後に】
 フォードとフェラーリの過去に「買収」の話が転がっていたのは知らなかったなあ。フォード社にとっては、フェラーリは因縁の相手であったことがよくわかった。ただのレース映画ではないところが好印象だ。企業戦争の裏側も丹念に描かれている。フォード社 vs フェラーリ社の戦いだけでなく、フォード社 スーツ組 vs ドライバー&エンジニア組という戦いも詰まっているのも魅力的だ。

 次は、ル・マンに関するドキュメンタリーを観てみることにしよう。『24時間戦争』や、『The Return』なんか、『フォードvsフェラーリ』を観てからだと面白いに決まっている。非常に楽しみだ。
Koshi

Koshi