Koshi

ブルース・ブラザースのKoshiのレビュー・感想・評価

ブルース・ブラザース(1980年製作の映画)
4.3
「80年代が奏でるコメディアン・ブルース」

【はじめに】

 ジョン・ベルーシ&ダン・エイクロイドは、NBCのTV『サタデー・ナイト・ライブ』に出演していたコメディアン。彼らがこの番組で披露したR&Bバンド「ブルース・ブラザース」のキャラクターを活かして制作されたのが、楽しいこと全部盛りの一大娯楽作『ブルース・ブラザース』だ。

 カーチェイス映画として見応え抜群なだけでなく、音楽ファンにとっても見逃せない1作となっている。

 黒いスーツに黒いサングラス。そんな格好をしている人を見かけたことはないだろうか。みんな、気をつけて!その人は、きっと「ブルース・ブラザース」の一味に違いない。そう、『メン・イン・ブラック』のウィル・スミスは、彼らの一味で間違いないはずだ。

【物語の概要】

 自らが育った孤児院の課税代5000ドルを払うために、バンドを再結成してお金を稼ぐ2人の兄弟の物語。盗んだお金ではなく、自らが稼ぎ出したお金というところが最大のポイントだ。税務局まで税金を納めに行く兄弟を描いた一大スペクタクルな作品となっている。

本作の魅力

 『ブルース・ブラザース」は、オープニングが無駄にカッコイイ。ただただジェイクが出所するまでを描いたシーンなのだが、様々なカメラワークで冒頭から私たちを楽しませてくれる。特に、刑務所の廊下を歩くシーン。これを下から撮る発想なんて一体誰が思いつく?そして、極め付けは、出所したジュークを迎える車が、格安の型落ちパトカーであるところだ。スタイリッシュな始まりをブラックユーモアで落とす。これが俺たち『ブルース・ブラザース」のやり方である。

 また、本作最大の魅力と言えば、ブルース兄弟たちが繰り広げる「怒涛のカーチェイス」の数々に違いない。ショッピングモールでの大暴走しかり、終盤の税務局へ向かうまでのド派手なカーチェイス。本作ほどお金がかかりすぎているコメディ作品も珍しいだろう。一体どれだけ大量のお金をつぎ込んだのだろうと考えれば考えるほど笑いが込み上げてくる。下手したらカーアクション映画よりも、カーアクションに力を入れているのではないか。カーアクション好きにはたまらない1作となっており、80年代の盛況ぶりが画面越しにバンバン伝わってくる。こんなにも破壊に特化した映画は観たことないや。

 そして、音楽映画としてのクオリティがあまりにも高すぎることも本作の魅力の1つだ。誰もが1度は耳にしたことのある曲たちが次から次へと流れてくる。この気持ちのよさがたまらない。80年代を生きてきた人たちは、なおさらそう感じるはずだ。映画館で鑑賞すると、盛り上がり方が桁違いであった。観ているこちらまで足踏みしたくなるほど最高に楽しい体験をすることができるのだ。「ブルース・ブラザース」の奏でる素晴らしい音楽にきっと酔いしれる。

 そして、ブルース兄弟たちがショッピングモールに突入していくシーンに流れる曲こそ、『ブルース・ブラザース』の代名詞。この曲をまさか映画館で拝める日が来るとは思ってもみなかった。午前十時の映画祭は毎回素敵なプレゼントをお届けしてくれる最高のイベントであるなあ。

【私の1番好きな場面】

 謎の女がブルース兄弟を襲撃するシーンたちが、何回観ても笑ってしまうぐらい面白くて大好きだ。今回はホテルでのエピソードを中心に話していきたい。

 まずは、ジェイクとエルウッドの2人がホテルに入る際に、待ち伏せしていた謎の女にバズーカで攻撃され、ホテルの入口が木っ端微塵になってしまう。しかし、何事もなかったかのような飄々とした態度で2人はホテルの中へ入っていくシーン。

 そしてもう一つは、ジェイクとエルウッドの2人が泊まっているホテルを警察が突き止めて、2人の部屋に乗り込もうとした瞬間の出来事。またまた謎の女の登場だ。あらかじめその部屋に仕掛けておいた時限爆弾を爆発させ、今度はホテル全部を木端微塵に消し飛ばす。しかし、2人は瓦礫の下から平然とした態度で出てきて「さぁ、行こうぜ」と切り替えて次のシーンへと移動していく。

 本作ほど切れ味の鋭い緩急を私は観たことがない。ここでこういうことが起きるぞ!とわかっていても、ジェイクとエルウッドの緩急の笑いにはなす術がない。ただ爆笑するしか残されていないのである。何度観ても笑いが絶えない素敵なシーンであった。

【最後に】

 本作は、問答無用で人を元気にさせる非常にパワフルな作品だ。最近元気が足りないなと感じる人は、本作を観て全て吹き飛ばして元気に笑ってほしい。きっとこの作品のもつ圧倒的なハチャメチャ加減に自然と頬が緩むに違いない。何事にも動じないジェイクとエルウッドの行動の数々から勇気すらもらえる。

 小ネタの数が多すぎるため、1度観ただけでは味わい切れないところも非常に魅力的だ。これからも、80年代のマスターピースとして後世に受け継がれていくことだろう。元気がないときには、この作品を観て一緒に元気を取り戻そうではないか。

【参考文献】

キネマ旬報社編 (2019)『午前十時の映画祭10-FINAL プログラム』キネマ旬報社
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