のどあめ

風と共に去りぬののどあめのネタバレレビュー・内容・結末

風と共に去りぬ(1939年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

キネマ旬報オールタイムベストにあるので視聴(YouTube)。

Black Lives Matterの運動を発端にした流れで、黒人奴隷を従えていた豊かな「古き良き南部」を回想するこの作品が一部の配信から一時的に削除されたというのは記憶に新しい(それでも数年前だった)。観ると、古いバージョンのためか彼女らの語尾が「だ」という「なまり」で統一されている点、プリシーがバトラーを呼びに行った時、バトラーたちが嘲るような応答を2階からするシーンなど、やはり気になる点は多い。しかしやはりハティ・マヌクダニエル演じるマミーが黒人俳優初のアカデミー賞受賞も納得の本当に素晴らしい演技。(黒人奴隷への残酷さがこの作品では隠蔽されているとわかった上でも)彼女を観るだけでもこの作品に触れる価値がある。なおさら彼女が当時のワールドプレミアに出席を許されなかったという話にはやはり驚く。
彼女とメラニーがこの作品の重要な「温かみ」である。

主なストーリーとしてはスカーレットの「成長」を描いていくが、正直最初はかなりその言動に辟易した。
南北戦争を通し、故郷の荒れ果てたタラの地で、再起を決意する不屈の精神を表した中間のミッドポイントのシーンに至る場面がハイライトだと思うが、これ以降もやはり彼女の「利己的」「自己中」「熱しやすい」性格が何度も現れる。なによりもボニーとスカーレットの絡みのシーンが(バトラーと比較して)少なく「母親」としての姿が見えにくい。子供まで生まれたのに、あくまでも「恋愛」にストーリーの主眼がある点にも違和感は残る。
メラニーが死の淵にいる傍(バトラーもいる)で痴話喧嘩めいた言動をとる部分も首を傾げる。
バトラーが去ったあとも急に洗脳のように父の「故郷」の地に対するセリフが連呼され「明日に希望を託して」と、ここで終わるのか…と思ってしまった。

散々書いたが、それでもワクワクするはじまり、出産直後のメラニーたちをつれて町を脱出するシーン(建物が焼け落ちる傍を通り抜ける)。焼き討ち後のメラニーと世間的に差別されるベルとの短いが互いを尊重した交流など記憶に残るシーンも多い。(アシュレーたちが過激化する前のKKKであるのも驚いたが)
なにより2回に分ける程度でみれたので、この間見た『アラビアのロレンス』よりは映画としてのリーダビリティは個人的にこちらの方が高かったし、面白かったのだろう。
彼女のようになりたい、とは思わないが「明日考えるわ」という強さはぜひ見習いたいところ。

どのような立場でも、どのような要素を持つ作品でも「過去」を「無かったこと」にしないために(注は有り得て当然だが)オリジナルの尊重はされて欲しいと思う映画体験だった。
のどあめ

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