ryo0587

ライトスタッフのryo0587のレビュー・感想・評価

ライトスタッフ(1983年製作の映画)
3.0
宇宙開発競争を描いた実録モノの古典

作中でも言及されるように現代において歴史を形成するのはマスコミであり、僕ら大衆は報道資料や映像だけを受け取って表面的な(ときには意図的に操作された)結果しか知り得ない。

その裏側には決して報道されないような泥臭い苦労(スーツの中で小便する)や苦い挫折(ポッドを回収できずに帰還後に失敗者として扱われる)、命を賭けたオペレーション、あるいは歴史に名を残すことがなかった先達や正しき資質を持つ者(イエガー)の存在がある。

こうした歴史的事実を別の側面から捉え直す意味合いもあるように感じた(まぁ、映画自体がある特定の意図に基づく編集された情報なのだけれども)。


マーキュリー計画に選抜された7人の勇気とフロンティアスピリットを賞賛しつつも、表舞台に出なかったイエガーを併置する構成が上記の印象を強くし、本作を単なる回顧録とは一線を画しドラマ性を深めている。

歴史には名を残さない、日陰の正しき資質の持主たちの貢献を忘れてはいけない。

マスコミが作る歴史的事実への批判的態度の表れなのか、群がる記者や歴史的な場面を狙うもうまくいかないジョンソン副大統領が醜く描かれていたのは面白いし、そんな彼らの言いなりにはならない飛行士たちの反骨と団結も良かった。

サルの方が従順と作中でも言われるが、サルでは持ち得ない反骨精神や自律、自らリスクを取る挑戦心は『正しき資質』の一部なのだろう。

実際のロケット打ち上げの失敗映像が多く使われているがこんなのを目の当たりにしてそれでもよく乗ろうと思ったなぁとただただ敬服。

奥様方の目を通してパイロット達の特異性や異常性が語られる場面があるが、きっと彼らの生き方や感性は先天的なもので訓練や努力で身につかないだろう。つくづく仕事や生き様、自身に備わる『正しき資質』について考えさせる作品で、タイトルがこんなにグッとハマっている作品も珍しい。

『トップガンマーヴェリック』観た直後のせいか類似場面多い気がした。本作へのオマージュだったのかも。
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