CSで放送しており、なんとなく観始めたらなかなか面白いフレンチ・ノワールでした。
何人もの囁き声が聞こえるオープニング・クレジットを経て、10才くらいの子供のモノローグから始まります。
夜中に母親の声で目が覚めると何やら階下が騒がしく、降りていくと運び込まれた父親の死体が横たわっており・・・
原題は“Les Voleurs”(泥棒、盗賊)なのに、この思わせぶりな邦題はけっこう好み。
冒頭からセリフによる詳しい説明が無いまま状況が徐々に明らかになっていく展開も好み。
泥棒一家に生まれながら、その反撥からか一人だけ刑事になり家族から疎まれている主人公がダニエル・オートゥイユ(当時46歳)、甥にあたる冒頭の子供からも嫌われています。
カトリーヌ・ドヌーブ(当時53歳)は主人公と三角関係になる哲学者。
アンドレ・テシネ監督の作品を観るのはたぶん初めて。
この暗い独特のタッチはなかなか好みでした。
オートゥイユは『八日目』と同じ年の公開作品。
ドヌーブは可憐だった若い頃と超貫禄の現在とのちょうど中間あたりでしょうか。
出演は他にブノア・マジメルなど。
主人公2人と三角関係になるジュリエット役のロランス・コートが印象的。
主人公をとりまく子供から老人までの登場人物たちのその後がどうなるのかといろいろ想像してしまう余韻のある終わり方がなんとも印象的。
プロデューサーのアラン・サルドって、本作でも音楽を担当しているフィリップ・サルド(『夕なぎ』『暗黒街の二人』『テス』)の弟だったんですね。