ひでやん

雨に唄えばのひでやんのレビュー・感想・評価

雨に唄えば(1952年製作の映画)
5.0
トーキー到来期のハリウッドを舞台に、映画業界の舞台裏で巻き起こる大騒動と恋を描いたミュージカル。

まずストーリーが面白い。マイクの位置や音声のズレ、イメージに合わない女優の声など、サイレントからトーキーへ移行する苦労がコメディタッチで描かれていて楽しめた。

ポップでカラフルでハッピーなストーリーだったが、リナはお気の毒。サイレントで耀いたスターがトーキーで笑い者になるのは切ない。なんとか彼女もハッピーになってほしかった。

本作の魅力はなんといっても歌とダンス。小細工なしの「本物」に感動。

ジーン・ケリーとドナルド・オコナーがバイオリンを弾きながら踊る場面が凄い。ピタリと息の合った2人のステップは神業。

「Make 'Em Laugh」は圧巻。
小道具やセットを巧みに使い、ずば抜けた身体能力で踊るドナルド・オコナーに目が釘付け。嫌な事があると悲しみの重力に負けて気持ちが沈んでしまう自分だが、彼の心は無重力。転がり、回り、跳ねて、笑う。重力に逆らい、壁を走って宙返り。

「Moses Supposes」は愉快。
発声練習中に踊り出し、やりたい放題の2人が楽しい。

「Good Mornin'」は驚き。
3人のきちんと揃った踊りがブラボー!
キャシー役のデビー・レイノルズは「スター・ウォーズ」のレイア姫を演じたキャリー・フィッシャーの母親なんですね、ビックリ。

そして「Singin' In The Rain」は最高。
自分が生まれ育った石川県は雨が多い。「弁当忘れても傘忘れるな」と言う程雨が多い。雨の日は憂鬱だ。自分は雨に嘆くがジーン・ケリーは雨に唄う。

「夜露?僕には太陽が降り注いでる」

笑顔でそう言う彼は、水たまりをバシャバシャとステップを踏み、傘を閉じて雨を浴びる。その姿を見ていると、なんだかとても幸せな気持ちになる。

ミュージカル映画史上最も有名なシーンと呼ばれたのも納得。悲しみを雨で流すのではなく、雨を太陽に変えて、歌って踊って吹き飛ばす。そんな彼の笑顔にじんときた。

定期的に何度も観たくなる名作です。
ひでやん

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