くりふ

恐怖の岬/ケープ・フィアーのくりふのレビュー・感想・評価

4.0
【淫らな狩人の夜】

本作の魅力はまず、ロバート・ミッチャムがエロい!ということです(笑)。私は、男には萌えませんが、この感覚はわかります。やたら脱ぐしね。

彼が、逆に全く脱がないお堅物、グレゴリー・ペックの弁護士一家を、逆恨み粘着ストーキングするわけですが、ミッチーがエロいことで、ペックの奥さんとロリ娘がひょっとして、彼を受け入れてしまうのでは?というサスペンスが生まれています。まずここが今でも色褪せぬところ。

上記伏線として、街の女にミッチー・フェロモンに靡かせていますね。「あんたのサイテーなところが好き」なんて会話が倒錯的で面白いんですが、彼女がその先どうなる?が、ペック妻子どうなる?の伏線にもなってます。

そして迎える「人妻○○責め」のぬるぬるが、個人的に本作の沸点です(笑)。生ものグッズ使った代弁が、かえっていやらしく、おぞましい!とりあえず、ヘイズ・コードよありがとう!と言っておきます。

J・リー・トンプソン監督は、ヒッチコック作品をかなり研究した上で、本作に臨んだそうですが、いい意味でヒッチぽくないですね。

フェチな所は殆どなく、常に役者が中央にいて、役者が物語を動かしている。カメラや小道具が主役になりもするヒッチ作品とは、大きく違うと思う。「見た目ショット」への拘りも殆どない。

他、例えばペック妻の驚きに寄る時、微妙な一瞬ズームでドキッとしますが、ヒッチならアップに割ってると思う。ヒッチ研究を、きちんと自分の表現に昇華しているのでしょう。さすが職人。

やがて物語は、狩りをしに来た男と、対決をしに来た男の衝突となりますが、このギャップから雪崩込むカオスが面白いですねえ。何の映画か忘れます。

獲物を狙い、ギラギラと濡れ光るミッチーの裸体にドキドキしますね(笑)。ここ、ひょっとして『地獄の黙示録』の元ネタか?とも思いましたが。

しかし、ペックの心が悪の泥濘へと、どっぷり踏み込んでしまうのか否か、まさに岬の縁に立つような揺らぎを少し、描いていることも見逃せません。

一度聴いたら忘れない、バーナード・ハーマンの音楽もお見事でありました。

<2012.12.13記>
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