りっく

スパルタカスのりっくのレビュー・感想・評価

スパルタカス(1960年製作の映画)
4.5
ダルトントランボのシナリオは、旧来の歴史劇に顕著であったキリスト教的な善悪の対立ではなく、被征服者が国家への反逆を通して個の尊厳を取り戻す過程に主眼が置かれている。

一方、キューブリックの演出は、ダグラスが企画していたヒーローものとしてのスパルタカス像に終始せず、閥族派と民衆はら元老院の政治の思想闘争を独特のユーモアを交えて描くなど、俯瞰的な視座から登場人物それぞれの立場を相対的に浮かび上がらせることに成功している。

特に剣闘士が初めて殺し合いをしなければならない中で、スパルタカスの相手として最後は高みの見物をしている権力に剣を向け命を絶った黒人騎士の雄姿。ローマ軍に壊滅的なダメージを与えられ捕虜となった剣闘士たちが、自分たちのリーダーを隠すために相手の誘惑にも乗らずに「私がスパルタカスだ!」と叫んで何人もの男が立ち上がる場面。そして磔にされたスパルタカスに自由の身となった愛する妻が生まれたての息子を抱え泣き寄る「勝利」の場面など胸が熱くなる場面のオンパレード。
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