がちゃん

薔薇の葬列のがちゃんのレビュー・感想・評価

薔薇の葬列(1969年製作の映画)
3.9
映画っていうのは、自分の知らない世界へ仮想現実として連れて行ってくれるのが、最大の楽しみであると私は思っている。
だから、できるだけ選り好みをせずに、
さまざまな作品を見続けてきた。
そこに新しい発見があると思うから。

そんな僕でもこの作品には眩暈がするほどの衝撃を憶えました。
ギリシャ神話のエディプスの物語を反転させた作品。
つまりゲイの近親相姦である。
母を殺し父と交わる・・・

実験映像の旗手として作品を発表してきた松本俊夫の、
劇場用作品第一作。
いかにもアングラらしい映像の洪水です。
スタンリーキューブリックの、
「時計仕掛けのオレンジ」でのコマ送り早送りのセックスシーンは、
この作品の影響だというのはあまりにも有名です。

主要の7人のゲイほすべて本物。
そして主人公「エディ」を演じるのが、
衝撃の新人ピーター。
この作品の妖しい魅力の95%は彼の魅力によるところが大きい。

ゲイにインタビューするシーンや、
マリファナ・パーティーでのサイケデリックな映像も、
時代を切り取っていて面白い。

当時の進歩的と言われた文化人たち
(篠田正浩や藤田敏八ら)が、出てくるところも面白いが、
なんとあの淀川長冶先生まで登場し、
この作品を解説したりする。

エディプスものということで、
先輩格(?)にあたるパゾリーニの
「アポロンの地獄」のポスターがオマージュとして登場してたり。

元ネタが悲劇なので、
ラストもそれになぞってあるが、
この作品は悲劇ではない。
パロディでありコメディである。
ずらっと並んだ男の尻の一番端っこの人の穴に、
薔薇がさしてあるなんて笑うしかなかったですよ。

また、ピーターの素顔を見たのもショックでした。

LGBTQが声高に叫ばれる時代。
コメディとして鑑賞するのは不謹慎だという声も上がりそうですが、
私は毒のあるコメディと断定したい。
がちゃん

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