Ronnie

バーバーのRonnieのネタバレレビュー・内容・結末

バーバー(2001年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

◆ネタバレがありますのでご注意ください


前編モノクロだが光と影を強調した映像が美しい。いくつかの個人サイトに書いてあったところではフィルムノワールを意識しているらしい。時代設定もちょうどそのころで車や建物などの美術も美しい。

エドはいつも黙ってタバコを吸っている。次々と不幸なことが起こっていく悲しい人生なのに、それを悲しいと思うことすら達観しているように淡々と自分の人生を回顧していく(刑務所の中で雑誌のために手記を書いているという設定)。

ポスターをみただけでなんの予備知識もなく観にいったので最初はなんとなくハートウォーミングコメディみたいなものかと思っていたが、ぜんぜん違った。主役のビリー・ボブ・ソーントンはアンジェリーナ・ジョリーの夫で、雑誌取材の写真を見るとかなりワイルドな風貌なのだが、この映画の中ではなにひとついいことのない数奇な人生を生きた、地味でモゴモゴ話すタバコ好きな無口の男を印象的に演じている。

タイトルは原題のほうがいい。「バーバー」というタイトルであのポスターデザイン、あのコピーは違うと思う。「The Man Who Wasn't There」そこにいなかった男。町の中を歩いても誰も見ようとしない、ユーレイのような男。

ベートーベンのソナタ「悲愴」のもの悲しく美しいメロディも印象的だった。

淡々とした映画だったが、エドの人生が妙に心に残り、気持ちが沈んでしまった。逆にいえばそれだけ印象的だったということだろう。けっして感動するわけでもなく心が温まるわけでもなく、カタルシスがあるわけでもない。だがそれでも悲しみが静かに心に残る作品というのは初めてかもしれない。

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(以下、覚え書き)
理髪店で働く無口な男エドは妻が職場であるデパートの社長デイブと不倫をしていることを知っている。無理やり連れて行かれたダンスパーティーでエドはピアノを弾く少女と出会う。

理髪店に来た客の男(オカマ)にドライクリーニングのベンチャービジネスを聞き、デイブを恐喝して起業資金を得ようとするが、そのことを責められ勢いあまってデイブを殺してしまう。ところが殺人容疑として逮捕されたのは彼の妻だった。

弁護士を雇う相談をしにいった知人の家で少女と再会したエドは彼女の才能のかけてみたいと思う。敏腕弁護士をやとい裁判の準備をする中、自分がやったと言っても信用してもらえない。

やがて妻は刑務所で首を吊る。それは妊娠していたからだ。

妻を亡くしたエドは少女を有名なピアニストの元に連れて行くが、才能がないと言われ、帰り道で運転中に少女からの「お礼」にハンドルを切り損ね谷へ転落する。

意識が戻るとオカマを殺した罪(実際にはデイブが殺したのであろう)で逮捕され留置場に入れられてしまう。再び敏腕弁護士を雇うが金が続かず、後任のやる気のない公選弁護人によって死刑となってしまう。電気椅子に座り、電極をつけるために脛の毛をそるかみそりはかつてバスルームで妻の足を剃ったことを思い出させた。死ぬことを恐れてはおらず、あの世でまた妻と話ができるだろうとエドは思った。
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