きみどり

つぐないのきみどりのレビュー・感想・評価

つぐない(2007年製作の映画)
4.0
イアン・マキューアンの原作『贖罪』は、オールタイムマイベストの一冊だけれど二度と読みたくない作品でもある。
マキューアンの小説に繰り返し登場するのは、取り返しのつかない一瞬だったり、ささやかな選択で人生があらぬ方向へねじ曲げられた人たちだったり。

『贖罪』はそのささやかな行為が幸せなひと組の男女の人生を台無しにしてしまう物語。
あの少女は「無垢」ではない。恋文の意味も、姉たちの関係も分かった上で嫉妬に突き動かされた女性だと、私は思っている。けっこう、怖い。シアーシャ・ローナンが適役だが、あの幼さですでに大人の風格がある彼女も怖い。

怖いといえば、映画では端折られてしまったもうひと組のカップルのありようは、もっと怖い。あの二人、自分を騙したまま一生を終えるつもりだったのだろうか。
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