熱湯

つぐないの熱湯のネタバレレビュー・内容・結末

つぐない(2007年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

「フィクションがリアルを侵犯し、書き換えてしまうこと。書き換えられた現実は虚構とは異なり、もう2度とは戻らないということ」
樋口恭介「すべて名もなき未来」の原作書評が面白かったので、まずは映画版を視聴した。

自らの若さ故に壊してしまった、愛し合うふたりのありえた人生を物語上で再構築する。監督・脚本はブライオニー。大筋は知っていたけど、途中まで自分も騙されていた。真実と虚構の狭間が分からない。だけど77歳まで再編集しつづけた彼女も同じだったのではないか。彼女の心象に私も迷い込んでいたのではないか。

死者にくちなしはある意味嘘。自分の中で反復しつづけるうち、その声は日に日に大きくなり、行動の規範にもなりうる。
ふたりが戦争を越えていたのなら、大人になった主人公はきっと会いにいけていたはず。たとえ罵倒されたとしても、2度と聞けないひとの声を想像しつづけるよりはずっとマシな人生が送れたんじゃないかな。

再編集のくだりは「さよなら絵梨」っぽい。調べた限り、オマージュの指摘はなかったが。異なるルートで出会った作品が、どこか繋がっていたら嬉しい。

色々書いたけど何がいちばん良かったって、やはりダンケルクの長回しだな。生きることを諦めない命の集合。力強い男たちの歌。実際の顛末も想起され、なんだか胸が熱くなった。西日のさす、観覧車やメリーゴーランドも綺麗だった。

熱狂の陰で人生を終えた、ロビーがもの悲しい。

本当にセリーシアは美しい。ありがとう。背が高くて肩幅があって骨ばっててタイプの身体。私が痩せたとてなれないから羨ましい。ロビーも顔良かった。

面白かった!という感じではないが、色々考えるのが楽しい。好みの映画だったのだと思う。
おそらく原作の方が主人公の意図がよく見えると思われる。読まないと。
熱湯

熱湯