竜平

ギルバート・グレイプの竜平のレビュー・感想・評価

ギルバート・グレイプ(1993年製作の映画)
4.3
ジョニー・デップ主演。田舎町エンドーラで家族と暮らす青年「ギルバート・グレイプ」に訪れる新たな出会い、そこから対峙していくことになる日々の悩みや葛藤を成長と共に描いていく。ラッセ・ハルストレムによるファミリー的ヒューマンドラマ。

ジョニデ演じる主人公ギルバートは知的障害を持つ弟の世話をしたりと面倒見のいい兄で、また町の人とも普通に交流する気のいい青年。ただ外側には出さないけどじつは感じてる窮屈さ、探してる心の拠り所というものがあり、そういった様子が家族や他との人間関係と一緒になって映し出されていく。今の環境に不満もなければ満足もしてない、という感じかな。家族の構成や設定が見事で、様々な要素がしっかりギルバートの内面に関わっていて、しっかり彼を悩ませてるという。そこでまた表情や意見には出さない性格、ジョニデの冷静な演技というのがこれを引き立てる。町の住人たちとの細かいエピソードも歯痒かったり切なかったりで、それがやけに現実的なのも刺さるところ。やがてジュリエット・ルイス演じる可憐な女性ベッキーと出会い心境にも変化が訪れるわけだけど、わりと微笑ましい前半とは打って変わって後半なんかは胸の締めつけられる想い。溜め込んでたものが溢れ出るような、若者特有のもどかしさをギルバートの中に見たりして。

障害を持つ弟を演じるのがディカプリオで、いやはやこれがまた名演。この頃からがっつり演技派だったんだねーなんて。ジョニデ然り、今現在とは一味も二味も違う名俳優たちのピュアで繊細な魅力を堪能できる、今作はそれだけでも一見の価値ありあり。改めて見て気づくけど、ギルバートのちょっぴり不器用な性格というのはきっと父親譲りだったんだよなと。そういったものが見える時、そしてそれを理解する者が現れる時なんかはやっぱりグッときてしまう。ラストには希望を爽やかに感じれる、たまにふと見たくなる良作。
竜平

竜平