竜平

雪山の絆の竜平のレビュー・感想・評価

雪山の絆(2023年製作の映画)
3.9
1972年、あるラグビーチームの若者たちとその家族や知人を乗せたウルグアイの航空機がアンデス山脈に墜落、そこからの生存者たちの壮絶な体験を描く。実話に基づくヒューマンドラマ。

1993年の映画『生きてこそ』のリメイクとも言えるのかな。あっちはハリウッド製作で、舞台がウルグアイ、スペイン、チリながら登場人物は全編英語で喋ってたっけ。今作は監督が『ジュラシック・ワールド 炎の王国』などのスペイン出身J・A・バヨナで、全編しっかり母国スペイン語、でキャストも恐らくみんな母国圏の俳優たち、ということでまずリアリティーが増してるんじゃないかなと。『生きてこそ』も十分壮絶に描かれてたけど、今作は情景豊かに、よりじっくりと丁寧に描かれていく。極寒の雪山、壊れた機体に少ない衣服に、過酷すぎる状況下でのサバイバル模様。見てるだけで寒くなってくる、いや凍える。で途中、彼らの「ある選択」がこの話に於いて重要になってきたりするんだけど、これはやっぱりいつ見たって鮮烈。極限状態で自分が普段持っていたもの、信仰心とか考え方とか物事の見方とか全部ひっくり返る様が印象的。既存のそれに捉われている者とそうでない者がいたりして、そこには対比とそれぞれを待つ結末なんかもあったりして、自分だったらどうだろうとかも考えてしまう。

生きて帰れるかなんてわからない、いやむしろほぼ不可能と思えるような状況。こんな時にはきっとただただ自分との闘いになるんだろうけど、それでも「自分が自分が」にならず、また争うなどもせず、登場人物たちの生き延びることを諦めない心と、仲間を思う精神、タイトルにあるまさしく「絆」に心打たれる。非常に力強い一本。一人では到底成し得ないことってのが世の中にはある。
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