今年のリメイク版フランス映画のもと作品で、16ミリからのブローアップなので、自主映画感が強い。そのため、不条理劇みたいなテイストが自然。柴咲コウの蛇の目も怖ろしかったが、不協和音だらけの演出に背筋がゾクゾクする。
脈絡の見えない、行き当たりばったりとしか思えないことどもが、次第に焦点を結び、復讐劇の全貌が明らかになる快感はリメイク版と変わらないのだが、本筋よりも、その過程の不可解に戦慄する。
新島が営む八百屋の二階の私塾は何なのか。小学生から初老まで生徒で、高等数学だけの講座。新島と宮下が相手にしている反社(らしい)組織は何なのか。コメットさんという刺客が怖れられているが、足の不自由な女性で、身動きさえも難儀。にも関わらず、仕込み杖であっさりと人を屠る。時折新島と宮下ががじっと見つめる暗闇な何なのか。リズムやテンポを無視した間は、作品全体を覆っている。
心霊も怪異も出てこないが、この作品は、ホラーだ。