平成19年、甲府。その中央を東西に抜ける国道20号線沿いには、資本主義の空虚さが流入してきていた。
どこかで見たことのある風景、空気感。
その頃全国の地方都市で、似たような景色が広がっていたのだろう。
当時、トラック運転手をしていた富田監督が、国道沿いの郊外にパチンコ屋と消費者金融のATMが隣り同士にあることに気づき、そこを行ったり来たりしながら毎日を過ごす若者たちから着想を得て作られたという。
どこにも行けない、行く術を知らない閉塞感。シンナー吸って、パチスロ打って、退廃的な生活を送る。その先には一体何があるのか?
目的を失い、惰性で生きる愚かな若者は、この社会構造が生み出したのか、それともそういう存在が社会を支えているのか。
高校生の頃、国道沿いのコンビニで、ピアスだらけの金髪の店員から名前を呼ばれ、ギョッとしてよく見ると中学の同級生だった。聞けば高校は中退したという。
その時に感じた「こいつの人生はこの先どうなるんだろう」という不安が久方ぶりに思い出された。余計なお世話で、そいつは今も楽しく生きているかもしれないが。