凛太朗

フランケンシュタインの凛太朗のレビュー・感想・評価

フランケンシュタイン(1931年製作の映画)
3.6
怪物フランケンシュタインのイメージを定着させたホラーの古典。
前に一度観てるけど、女流作家メアリー・シェリーによる原作を読んでみて再鑑賞。全然別物じゃねーか!

とある身勝手な科学者が創り出した怪物フランケンシュタインは、実はフランケンシュタインじゃなくて、フランケンシュタインを創り出した科学者がフランケンシュタインなんですねぇ。
わけがわからないよと。つまり科学者の名がフランケンシュタインでそのフランケンシュタインが創ったのは、名無しの怪物なんですな。
オープニング・クレジットでもこの怪物はThe Monsterであり、演者は『?』となっているんですな。当時としては粋な恐怖演出である。
でも何が一番怖いって、それは身勝手な科学者フランケンシュタインであり、群衆であり人間なんですな。
勝手に創造された名もない怪物は、結果として人を殺めてしまっているとは言え、ただただ悲哀に満ちた憐れな存在だよ。少女とのひと時で見せた純粋な笑顔がより憐れみを誘う。
科学者フランケンシュタインは、また違う方向で憐れだね。人って憐れだわ。そして胸糞だわ。
何せこの映画がなかったら、人造人間8号ことハッチャン(ドラゴンボール)も、Dr.マシリト(Dr.スランプ アラレちゃん)も、多生まれなかったんだろうし、マシリトの住処も全然違ってたんだろうな。
何故に鳥山明の諸作品が真っ先に思い浮かんだのかは聞かないで下さい。多分ドンズバ世代だからです。

メアリー・シェリーの原作『フランケンシュタイン あるいは、現代ののプロメテウス』は、正直個人的にはこの1931年の映画より遥かに好きです。
メアリー・シェリーが当時この小説を書き出したのが若干18歳。完全に天才のそれだと思う。
最初のSF小説とも謳われるゴシック小説ですが、哲学的な寓話であり、壮大な自然観が美しく且つ険しく描かれ、人物の内外面の描写は緻密で、荘厳であり耽美且つ退廃的。フランス革命を主とした時代背景を凡ゆるメタファーを用いて綴った傑作だと思う。
凛太朗

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