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決闘者
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『決闘者』に投稿された感想・評価

2.7
TSUTAYAの「発掘良品」コーナーで見つけた作品その3。
内容としては「西部劇」作品。

この「決闘者」という映画だけど西部劇作品らしい男のロマンが詰まった作品、ではない。

この映画で描かれるのは平和で秩序が保たれた町が1人の男によって無法地帯になっていく様子。
たった1人の男が住民達の本性でありどす黒い感情を表に引きずり出し、人間の恐ろしさや浅ましさをスリリングに描き出してゆく。

「決闘者」という題名の通り、決闘シーンでこの映画はクライマックスを迎えるが80分もない尺でそれぞれの登場人物を深く描いておらず、決闘シーンに対する見ている側の熱量が低い。

スリラーとして「1人の人間が周りの人間を狂わしてゆく」というテーマは面白い。
どこからかやって来た一人の荒くれ者が、町の人々を混乱と恐怖のどん底に陥れ、やがて保安官と決闘するまでの緊迫した一日を追う西部劇。
ある一日の物語。たった一日なのに、たった一人の男がやって来ただけなのに、人はここまで影響されてしまうものなのか。
たった一人のイブツによって、コミュニティ内の倫理が揺るがされ、まとまらなければ弱くて脆い個々人の本性が暴かれていき、平和だった町全体がイッキに無法地帯へと傾いてゆく恐ろしさが描かれている。
よそ者を擁護して立場を悪くする保安官、リンチを煽動する牧師、私情で裁こうとする判事、悪党をかくまう女先生、どこからわいたかアウトローの取り巻きになってしまう小市民、みんなが場当たり的に流されて意志決定をおこない愚かな行動を起こすことで、あれよあれよと悪いほうに傾いてしまうさまに、人の良心の脆さを突きつけられる。
ならず者ガンマンは、すべてを銃の勝負で決する古い時代の男だけど、真っ当に自由を愛するアウトローでもある。これは、世が世なら善玉の素養のあるキャラクターではないか。「俺は好きにするから。お前らも好きにしたらいいじゃん。」みたいな態度してるのが、かなりタチが悪い。そうはいかないのが、法治国家なんよ!
つまるところ、彼は西部開拓のフロンティアスピリットの負の面を背負った存在であり、それを止めるものとして近代国家の法秩序の番人たる保安官が対立していかなければならないのは、必然的な展開と言える。
保安官は良心に満ちた無難な善玉。一方で悪役のシャゲイディは言うほど邪悪ってわけでもない。態度のでかい乱暴者のようにみえて、彼の立場からすれば筋道だったことしか言ってないし、見る人から見れば普通に好人物として写るであろう人物造形は、たいへんよくできていると思う。
判事に食って掛かるのは自分の身を守るためだったし、日曜日に仕事を頼んで悪いねと余分に金を渡す気っ風のよさも持ち合わせるし、自分を排除しようと行動を起こしたものたちには、お前らは臆病者だと正論をかざして説教を垂れる。彼は最初ちょっとした騒動を起こしただけであって、実は一方的に悪いことはあんまりしていないのも肝。
わりと受動的で、自ら手を下さない悪役。まるで、人の弱さをあばいて悪を為させることこそが彼の真の目的であるかのような、ウエスタンに舞い降りた失楽園の魔物。他の印象が薄れるくらい、かなり好きな悪役だった。
勧善懲悪のオーソドックス西部劇の枠組みを用いながら、倒置的な文脈をもちいて現代にも通ずるようなテーマを打ち出したのが、本作の白眉と言えよう。
あらすじ

西部の小さな町ウエスト・エンドの日曜日、その日は保安官のアラン(ジョック・マホニー)とシャーマン(マーラ・コーディ)が結婚する日だった。シャーマンは元酒場女だったが、今では町民たちに暖かく迎え入れられていた。式を控えたアランはお尋ね者を追って町のはずれに出ていた。岩陰から狙われたアランは、間一髪のところをジャゲイディ(ディル・ロバートソン)という男に救われる。
ジャゲイディは法に縛られることを嫌い、銃で全てを決する古い型のガンマンだった。アランは彼に礼を言い、町の教会に寄って花嫁に待つよう言付を頼んだ。ところがジャゲイディは町に入るやいなや事件を起こし、町の人々の憎しみを買ってしまう。戻ってきたアランが彼を擁護したため、判事や牧師たちは非難と疑念の眼を彼へ向けるようになる。
平和な町に現れた一人の無法者が人々を混乱と恐怖のどん底に陥れ、やがて保安官と決闘するまでの緊迫した一日を追う西部劇。たった一人の人間によって、人々の偽善や本性が暴かれてゆき、町全体が無法地帯に変わってゆく恐ろしさをスリリングに描き出す秀作である。