三樹夫

テシス 次に私が殺されるの三樹夫のネタバレレビュー・内容・結末

テシス 次に私が殺される(1996年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

おどろおどろしい雰囲気が最高に好き。ジャンルとしてはミステリーではなくサスペンスとかスリラー。犯人は結構簡単に分かっちゃうし。原題のテシスはスペイン語で学位論文という意味。
この映画って登場人物が感情あまり出さなくて表情がないし、部屋に入ってもすぐペルシアナ(スペインのブラインドみたいなもの)下ろしたりで光量が少ない。だからこっちもカーテン閉めた暗い部屋とかでひとり怪しいビデオを観てる時のような気分になれる。

メインの3人はアンヘラが一般人、チェマがオタクの象徴化したキャラ、ボスコが残虐性や暴力性を表してるだろう。アンヘラ(一般人)はスナッフビデオとか気持ち悪いし興味ないとか言いつつも、轢死体見ようとしたり、手で顔覆ってても指の隙間から見てたりでそういうものに興味津津。
チェマ(オタク)は何か残虐な事件が起きれば真っ先に疑われ違うと言っても信じてもらえないとすねてる。ボスコ(残虐性、暴力性)は明らか近寄っちゃいけない存在なのにどこか魅力的で惹きつけられる。実際アンヘラを惹きつけているし。
オチのブラックさも良かった。口でいくら綺麗ごと言ってもどうせ扇情的な残虐とか好きだろお前ら感があって。映像の講義やってた教授の大衆が求めるものを見せればいいというのが伏線になってて、大衆の見たいもの=扇情的なグロというわけだ。またこの映画自体も殺人だのなんだのの扇状的なプロットで惹きつける作品になっており、この映画を観る者は作品内の大衆と変わらないという構造になっている。

思いっきりタバコ吸いながら講義やってたな。スペインも昔はそんな感じだったんだな。まあスペインって結構タバコに寛容だけど(今は店の中、サテンとかバーでも一切吸うのは禁止されてるが外でなら吸える)。綾辻行人によると昔は(在学してた80年代ぐらいか)京大も講義中に吸えたらしいが、そういうのも、ビデオというものが無くなったというのと同時に多少の郷愁性を感じるし、こんなに堂々とタバコ吸えて羨ましな。
やっぱりビデオの怪しさは他の映像媒体の追随を許さぬくらい飛び抜けてる。ラベルの貼られてないビデオの持つ怪しさといったら、何が記録されてるか分からん。それはイカレた作品がビデオで大量にリリースされていたというのもあるし(DVDの遥か上を行く)、道端に捨てられていたラベルの貼られてない、またはラベルが削られているビデオ(たぶんAV)が、そういう、ビデオ特有の如何わしさを醸し出すのに一役買っているのだろう。
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