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カティンの森のeのレビュー・感想・評価

カティンの森(2007年製作の映画)
4.0
こういう歴史的な事件があったという前提の元、ほとんど説明無しに話が進むので、最低限の歴史の流れを抑えておかないと少し分かりづらいかもしれない。監督はこの映画を80歳で撮ったというのだから執念を感じる。ドイツとソ連に挟まれたポーランドの暗い歴史。ナチスにもやられ、ソ連にも従属するしかなかった苦悩が垣間見える。しかし赤軍の機械的な銃殺はナチス以上の寒々しさだった。

さて、ひとつ気になったのがクラクフで大学教授たちを逮捕するナチスのミュラーなる親衛隊員。調べてみると、ゲシュタポのハインリッヒ・ミュラーではなく、ブルーノ・ミュラーという人物でアインザッツグルッペンの隊員だったようだ。そのまま独ソ戦もアインザッツグルッペンとして行動しているようである(つまり数万人の殺害に関わっている)。クラクフでの行動は時期的にAB行動の前哨戦くらいの時期だろう。このあと多くのポーランド知識人がナチスによって殺害される。

ナチスが知識人を殺害するのも、ソ連が将校を殺害するのも、自分たちの支配体制をより容易く築くための措置であろう。しかもソ連のこの犯罪は、戦後何十年も曖昧にされたままだったのだ。
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