ヒトラーとスターリンに引き裂かれた悲劇の国、ポーランドの過去。
ナチの影に真相が葬られた、ソ連による虐殺。
淡々と寡黙に描かれるが、とても重厚。
当時の独ソと、それに挟まれていた東欧諸国の関係など、ある程度の予備知識がないとツラい。
また、特に説明なく時間や場面が切り替わるので、登場人物を覚えるのが苦手だと訳が分からなくなるかも。
内容はカティンの森事件に至るまでと、事件の発覚後が描かれる。
捕虜となったのち殺害されたポーランド人将校の視点もはさみつつ、主にのこされた家族視点。
とにかく、圧倒的な神の不在。
右を向いても左を見ても、どうしようもないほど人間。良くも悪くも。
全く違う話だけれども、遠藤周作の沈黙を思い出した。
大将夫人の放った〝思いは違っても行動は同じ。思うだけでは何の意味もない〟という言葉、
アウシュヴィッツ帰りの女優が引用した〝悪のみに囲まれて、生きる意味はある? 本当の不幸は亡兄が墓もなく見捨てられること〟という台詞が印象的。