ヒロオさん

めしのヒロオさんのレビュー・感想・評価

めし(1951年製作の映画)
3.9
毎日夫に尽くし妻の役目をきっちりと果たしてきた妻が、ある出来事を境に我慢の限界に達する話。

監督に成瀬巳喜男、俳優に原節子、上原謙の2大スター、監修に川端康成という超豪華な昭和の名作。

女として生きることの閉塞感を描いている。
そういう点では、『82年生まれ、キムジヨン』の昭和版という感じ。

冒頭のセリフから、ぐっとひきこまれた。「1年365日、台所と茶の間の行き来。同じような朝、同じような夜が続く。女の命は虚しくそこに朽ちていくのか。」

「めし」だとか、「まだ片付いていないのか」とか言われても、笑顔で返事する妻。家計も切り詰め、自分は贅沢をせず、夫が飲んだくれて帰っても寄り添い続けてきた。

愚痴を吐く相手もいない。近所では綺麗な奥さんって話題で、友人たちからは幸せそうと言われる。

そこに家出した夫の姪が家に居座り始める。彼女は夫や近所の男に色目を使い、妻のペースを乱していく。

途中までセリフや振る舞いにリアリティがあって素晴らしかったのに、結末はがっくし。
悩んで何を決断するのかって、一番大切な場面のはずなのに、心情の変化の描き方が雑で、強引。
凝り固まった美学に当てはめているだけ。
「女の幸福とは、男に連れ添って生きていくこと」は流石に辛いって。諦めやろ。当時の反応が知りたいなぁ。

昔の風景観れるのが面白い。
特に、本作のような茶の間を描く作品は、生活をより具に知ることができて良い。
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