とり

スイミング・プールのとりのレビュー・感想・評価

スイミング・プール(2003年製作の映画)
4.0
シャーロット・ランプリングを堪能しまくる映画です。
表向きは大女優ランプリングと新進気鋭のリュディヴィーヌ・サニエの2人を堪能ってことになるんでしょう。でも私はこの若手女優さんを知らなかったし、ランプリングの背徳的な美しさが昔から大好きなので、ランプリング一色で。
とは言っても若手ギャルのサニエの今風で若さにあふれた美しさがあればこそ、ランプリングの魅力も増そうというものでしたけどね。

順調に一般大衆向けミステリー作家としての道を歩んできたらしいランプリング扮する中年女性は、今の自分の現状に疑問を抱いている。本当に書きたいもの、編集長との確執、老いた親との日々の生活など。これは作家でなくてもある程度人生を歩んできた年代の人なら誰しもが感じる感覚ではないでしょうか。
そんな彼女がフランスにある編集長の別荘に一人で赴きリフレッシュをはかるというもの。なんだか自分探しのほんわかドラマのようですが、一応ジャンルはミステリーということらしい。

この別荘地(厳密には編集長の自宅になるのかな)の庭から室内にいたるまで、とてもいいんです。電車から降りて別荘に行くまでのちょっとしたシーンから、散策で周辺を歩く風景が物凄く美しい。まぁ普通の田舎ではあるんですが、時間がとてもとてもゆっくりと流れていてサンサンと降りそそぐ太陽の光がとても暖かい。
何よりも庭のプールがいいんです。さすがタイトルについているだけあります。枯葉が浮きまくってて普通に考えると汚いんですが全然そんな感じではなく、むしろ自然。二階の窓から眺めると半分が木に隠れていたりするのも最高。
そんなのどかな風景の中、ランプリングの執筆意欲とともにこれまでおさえてきたであろう本来の自分がじょじょにあらわれてきます。

全体的なストーリーはまぶしいばかりの自由奔放なギャルにイライラさせられる系。けっこう淡々としてるし流れもゆっくりなんだけど、全く退屈することなく見入ってしまいました。ランプリングの演技力に引き込まれてしまった感じ。
2人の女性のキャラ作りもよくできています。エンディング後にあれこれ考える手助けとしても相当秀逸。

ちなみに途中でも何度か「???」と一瞬違和感を覚える作りなんですが、ラスト5分で更に???????頭の中が混乱してしまいます。おそらく十字架がキーポイントなんでしょう。繰り返し観たら徐々に理解が深まるかもしれません。
そんなわけで色々考えさせてくれるいい映画だと思います。映画のストーリーについてはもちろんですが、人生とか老いとかいろいろ。とりわけ女性にはけっこうズシっときますね。
カメラワークも意味ありげだったり情緒あふれていたりで味わい深いです。
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