義民伝兵衛と蝉時雨

愛の記念にの義民伝兵衛と蝉時雨のレビュー・感想・評価

愛の記念に(1983年製作の映画)
3.6
渇愛、淫奔、男性依存、失愛、自己欺瞞、性的快楽への逃避行、現実逃避。

愛する恋人への渇愛から派生した報復的な淫行、
そこから始まった思春期少女のアバズレ録。
それは後に、家庭崩壊、機能不全家族、といった宿命的な家族関係の鎖に繋がれた思春期少女の不憫な憂鬱の忘却を求めたアバズレ録へと変わっていく。

目を見張る長回しカメラワーク、思春期少女の刹那的な情景を奏でるような印象的なショットが多々。撮影当時14歳のサンドリーヌ・ボネールの身体を張った生々しい圧巻の演技。兄役のドミニク・ベスネアール、母役の女優の怒りっぷりも笑ってしまう程に凄まじい。そしてモーリス・ピアラ自身が演じた父役の人間臭ささ溢れる存在感がこれまた素晴らしい。レア・セドゥの実母ヴァレリー・シュルンベルジェなども登場して、ゴッホについての談話など役者陣の掛け合いからも目が離せない。本作の放つ生々しいほどの人間臭さはどこまでいっても素晴らしかった。