・ジャンル
サイコスリラー/サスペンス/ミステリー/スラッシャー
・あらすじ
モーテルの惨劇から22年後
精神病院に収容されていたノーマンは正常になったと認められ、犯した罪も心神喪失により責任能力無しとして釈放
犠牲者マリオンの妹ライラが抗議の為に集めた署名も法的効力を持たず彼は無罪放免となった
自宅へと戻り担当医師ビルの手配でダイナーの厨房手伝いとして社会復帰し暮らす中でノーマンは1人の女性と出会う
彼女の名はメアリー、ダイナーの給仕係である
初仕事を終えた晩、同棲する彼氏に捨てられ行き場を失ったメアリー
事情を知ったノーマンは自宅へと招き入れる
徐々に深まっていく2人の親睦
その関係はモーテル再開の為に彼がダイナーを辞めてからも続いていった
しかしその裏でノーマンは再び死んだはずの母に悩まされる事となる
生前の様に叱りつけるメモや電話、家の中に漂う気配…
やがて彼の知らぬ所で再び事件が起こり始める
自分を疑い始めるノーマンを支えるメアリー
その裏には1つの大きな秘密があったのだが…
・感想
ロバート・ブロックの同名小説を原作に鬼才アルフレッド・ヒッチコックが手掛けた「サイコ」の続編
今作からは監督及び脚本が変わっているが主人公ノーマン及び犠牲者マリオンの妹ライラは共に役者が続投している
前作がヒッチコックとジョセフ・ステファノの手腕によって繊細且つ緻密に練られた傑作だったので2人とも携わっていない今作には少々不安があった
しかし蓋を開けてみると前作までの物語や世界観を踏まえた上で後日談を描いた今作もまたなかなかの出来だった様に思う
モノクロからカラーへと切り替わるオープニングの時点で期待の持たせ方も上手い
自身の抱えてきた狂気やトラウマに呑まれまいと抗い続けるノーマン、更生を信じる事なく彼を精神病院へ再収容させようとするライラ、初めは恐怖や不安を抱えていたが良き味方となっていくメアリー、ノーマンを蝕むメモや手紙の真相を追う医師ビル…
それぞれの立場が遺憾無く発揮され、犯罪者や精神疾患を抱える者の更生とそれを阻む遺族の思いが拮抗する内容は現代にも通じる普遍的な社会派性が感じられる
今回は誰が真犯人なのか?という謎が今作の肝だがその謎の使い方も上手い
それがあってこそ登場人物達の心理がより生々しく感じられ、誰もが怪しく見える事で鑑賞者にも人間不信を煽ってくる
現代のここ日本でも前科者や犯罪者への風当たりは強く、更生を認めない事が再犯へと追い詰めてしまうという悪循環が起き続けている
恐らくそれはどの国でもそうであろうとは思うものの個人的には日本はそれが特に強く感じられる場所の1つ
だからこそ内容が身近に感じられメッセージ性が重たくのしかかって来る
人間不信という誰にもある心理を再認識させる今作は前作とはまた違った魅力がありながら、人間の脆さという要素は地続きで名作の続編として極めて秀逸だった様に思う
問題は真犯人の正体
今作のラストは更なる続編を作る上でノーマンを再び狂気に目覚めさせる必然的な物で締めとして美しい
その為に必要な要素であるのは確かなもののこれによってそれまでのミスリードが無意味な物と化してしまっていた
逃れられないカルマを描いていると捉えれば納得出来る物ではある
しかし些細な部分もなるたけ見落とさず推察しながら鑑賞させる様に構成された作品なので軽い肩透かし感はどうしても否めない
とはいえそれでも全体を通じて名作を没落させず新たなストーリーを築き、狂気のその後というホラーやスラッシャーでは無視されがちな部分に焦点を当てた内容は素晴らしかった
それでいてゴア描写が若干強化されていたのも良い
「ハロウィン」シリーズのリブート版が好きな人には刺さるんじゃないかな
オリジナルシリーズで残されたのはあと2作
今作がこれだけ健闘していた作品だったので劣化していないと良いなぁ…