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イレイザーヘッドのKEYのレビュー・感想・評価

イレイザーヘッド(1976年製作の映画)
5.0
デヴィッド・リンチ監督の長編映画デビュー作。

TUTAYAでリクエストしてから一ヶ月経っても何も連絡が来なかったので聞いてみると、「在庫が無く、いつ届くかわからない、遅い時で半年待ちになる。」と言われたので、キャンセルして勢いでリストア版を購入。

特にリンチファンと言うわけでも無いが…まあ良いだろう。ちなみに同監督作は、『マルホランドドライブ』『ワイルドアットハート』を観賞済み。
因みに自分は入ってないから観れないけど、前にNetflixで配信してるって話を聞いたことがあります。気になる人は要チェック。

映画が好きで監督を気にし出したら、デヴィッド・リンチの作品は避けて通れないだろう。そもそもfilmarksのアプリをインストールして、今作のレビューを見ているあなたに、こんな事言うのはおかしいかもしれないが…それくらい有名だと言うことをあえて書き、中でも今作は難解で不快感を煽るような話だと釘を刺しておきたい。
僕だったら今作を、リンチ監督の映画を初めて観る人には、絶対勧めない。
僕がそうした様に、スコアの高い上記作品から観るのが妥当だ。
しかし、ここ迄言われても今作を観たいような、捻くれ者と物好きには全力で今作を勧めよう。みんなでレビューを書いたり、Twitterに画像付きで「難解すぎワロタwww」投稿しようじゃ無いか。

ちょっとテンションが上がり過ぎたので、いつも通り抑えて書きます。

今作を理解する為にも、やっぱり同監督作品は観ておいた方が良いかも。
他の監督作品だとドッニヴィルヌーヴ監督の『複製された男』が、今作に影響受けたんじゃ無いか?って思うくらい類似している。

『ワイルドアットハート』はバイオレンスシーンもあったが、かなりポジティブなストーリーである。それと比べると『マルホランドドライブ』はかなりネガティヴで、自分の無力さを突きつけられるオチだった。今作はどちらかと言うと、後者に似ている。


冒頭は少し透けた主人公の顔のアップからゴツゴツした惑星へと移り変わり、口から溢れ出す物体、そして顔中に出来物ができた老人があるレバーを引くと、白いひも状の物体は飛んで行き液体の中に落ちる。
この後場面は宇宙から地球へ変わり、主人公視点での物語が進み始める。家へ帰ると、突然姿を消した元恋人から連絡があったと、隣人に伝えられる。
何故今更…
破られた写真と、彼女の家の前で佇む姿から、彼女のからの連絡が「予期せぬ出来事」であったことは間違いない。しかしそんな彼を、更に追い込む出来事が待ち受けている。
実はこの元恋人、妊娠してると言うのだ。

「あの子とヤッたの?ヤッたかどうかが重要なのよ‼︎」

この時から主人公はパニック。首筋を舐める彼女の母親、生きてるかの様に動き出す肉片、発作を起こす彼女、以降劇中起こる出来事は、ほとんど彼の妄想である。

実は今作は、デヴィッド・リンチ監督の100%自伝映画らしい。
フィラデルフィアでアートを学ぶ学生だったリンチは、21歳のときに恋人が妊娠。それから四年後に完成した作品が今作『イレイザーヘッド』である。
今作を観る限り、リンチにとって恋人の妊娠が「予期せぬ悪い出来事」であったことは間違いない。
あえて白黒で描かれる今作は全編不気味ではあるが、特にネガティヴな印象を受けるのは奇形の息子だ。
今作では倫理感など配慮することなく、自分の子供は不吉さの象徴として奇形で描かれている。
まあ確かに21って言ったら今の自分同い年だし、そんな人生これからって時に彼女から妊娠を伝えられた時の不安は計り知れない…

完璧に男視点での理想と現実と否定的な妄想が描かれている為、「くだらない」と思う人も多いだろう。難解と言われる作品だが、表現が遠回しなだけでストーリーは実に単純なのだ。

しかし『マルホランドドライブ』等のドラマを排除した作りだからこそ、リンチ監督の脳内をストレートに味わえる作品になっているのでは無いだろうか。他の同監督作はあまりハマらなかったが、今作でその奇才を改めて評価したい。
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