垂直落下式サミング

エルム街の悪夢3/惨劇の館の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

4.0
第一作から5年後、ふたたび活動を始めたフレディによる悪夢の症状に悩まされ、精神病院に入院させられたエルム街の子供たちが、催眠療法と他人を自分の夢の中に引き込む少女の特殊能力によって、全員の力でフレディに立ち向かう。人気ホラーシリーズの第三作目。
一作目で主人公のナンシーを演じたヘザー・ランゲンカンプがシリーズに復帰。彼女は大学院で心理学を学んだ夢の専門家になっていて、フレディの悪夢に悩まされている子供たちが集められた精神病棟にインターン生としてやってくる。
シリーズのメインキャラクターとしてナンシーを再登場させ、夢と現実の扱いにしっかりと線を引くことで不評だった二作目の路線から決別。
やはり『エルム街の悪夢』は、一作目のような「眠ってはいけない」という設定の法則性が魅力であり、「フレディには何が出来て何が出来ないのか」という物語上のルールに一貫性を持たせることが必要だったと痛感する。
本作では、「フレディの死んだ家」「縄跳びの数え歌」「ユーモラスな殺人」など、アイコン的ではあるがシリーズの特色が強調され、「フレディの出生の秘密」にも言及していくため、世界観を踏襲した続編へと舵取りをすることで、今後のシリーズの進むべき方向を決定付けたといえる。
悪夢の世界のユニークさと、特撮シーンの大仰さは、この辺りから豪華になっており、マリオネットに乗り移るクレイアニメ、アンテナを生やしてテレビと一体化した姿のほか、様々な姿で楽しませてくれる。
人形、テレビ、麻薬、車椅子など、それぞれのキャラクターの恐怖や不安を煽る道具で襲い掛かってくるのは、なかなかに意地悪。特に、童貞を誘惑する恥女のお姉さんが実はフレディでしたという展開は、大好物をちらつかせておいて目の前で放り投げられるような非道。あとチョットのところで夢精出来たかもしれないのに…かわいそう。
しかし、生き残った側の人たちが、行方の知れない仲間を心配したり、犠牲者を悼んだりするような言動をあまりしないので、どうにも薄情にみえてしまう。細かい部分ではあるが、メインキャラクターが好感の持てる人物かどうかは結構大事。個々人が集まって結束することで事態に活路を見出だしていくチームワーク活劇としての爽快さに乏しい。
若手役者陣は、美人モデルのジェニファー・ルービンが出演しているが、主役じゃないので残念ながらこれといって見せ場はない。夢の世界では何故か髪の毛を尖らせたパンクファッションになってフレディに立ち向かうが、「ハイになろうぜ!」と違法薬物を注射されてやられてしまう。
あと、ローレンス・フィッシュバーンが施設の職員として登場している。痩せているのでそっくりさんかと思った。