三樹夫

穴の三樹夫のレビュー・感想・評価

(1960年製作の映画)
3.9
囚人部屋の5人が脱獄をしようと計画を立て実行する、ひたすら穴を掘る脱獄もの。BGMを排して劇中に響く音は脱獄のための作業音のみで、コンクリートを叩き割る音、穴を掘る音、やすりで鉄格子を切る音などが大きく響き、看守にバレるんではないかとハラハラする。脱獄のための作業一つ一つをじっくり描き、どんなアイテムが必要でどんな作業が必要かというのがまるでドキュメンタリーの様に描かれ骨太な印象を与える。一番最初の穴を掘るシーンの長回しは大きく響く音も相まって良質なサスペンスとなっている。看守の検査や夜の見回りをどのようにごまかすかという工夫も観ていて楽しい。

なんでロランがそんな地下の形状に詳しいのか謎だったり、簡単に鍵をピッキングできたりなど都合のいい部分もあるが、疑問を持つところはすぐに次の展開へと移行し、綿密に描いても粗が見えないところはたっぷり時間をとり綿密に描くと演出の巧みさで引き込んでいく。
ガスパール以外がどんな犯罪で投獄されているか分からないことで脱獄しようとするおじさん達にすんなり感情移入しやすくなっており、おじさん達が気のいい人達に見えることに阻害がないように作られている。
この映画における最大の罪とは裏切りで、刑務所の囚人たちが何の罪で投獄されているかはガスパール以外分からないため、裏切りが劇中最も最低最悪の罪として浮かび上がってくる。男同士の友情においては裏切りの罪を犯した奴が一番の極悪非道で最も刑務所に投獄されるべき囚人という映画だ。
三樹夫

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