KAJI77

穴のKAJI77のレビュー・感想・評価

(1960年製作の映画)
5.0
脱獄映画の原点にして頂点!ジャック・ベッケル監督のフランス映画、『穴』(1960)を鑑賞しました…!!

【あらすじ】
1947年。舞台は様々な罪を犯した者達が集うサンテ刑務所。殺人未遂の容疑で投獄された青年「ガスパール」は、移動先の監房で4人の男達と相部屋になった。しかし、なんとその男達は果敢にも脱獄を謀っていて、無論ガスパールもその計画に加担する事となり…。

僕達が様々な場面で対峙する「穴」。耳鼻の穴、枯れ木に空いた穴、トンネルの穴、ダムの穴、時空の穴…etc
でもよくよく考えると「穴」というものはそれ単体では凝然し得ない不明瞭な存在です。「ドーナツの穴を残して食べる事は可能か?」という命題についての議論が哲学の界隈では有名ですが、「穴」というのは未就学児でも知る所にあるのに、その実"何も無い"(="無い"という至上命令においてのみ存在する)という非常に難解な定義でもあります。とても深い…。笑

さて、この映画はその題名の通り「男が穴を掘る」という、要約するとたったそれだけの映画です。しかし、急かされるかのような金属音の響き渡るそのリアリティや、細かな心の動きはまるで"穴の定義"のように文学的な深みのあるもので、この感動は本当に観てみなければ分からない。(逆に言えば「観れば分かる」ってやつです。)
これこそが人間が腹の底に抱える"葛藤"の、最も正確な表現である事は疑う余地もないでしょう。この作品の出来の良さはそう思わせる程のものでした…!!文句無しの高評価です!!
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