MissyEllio

ブラックブックのMissyEllioのレビュー・感想・評価

ブラックブック(2006年製作の映画)
4.5
ヴァーホーヴェンついでに、というか本作が1番好きなので。

ナチスとレジスタンスの闘いを軸に、政治的・心情的にも難しいテーマを、絶妙なバランスで完成させた作品。

英雄視されるレジスタンスの暗部を照らし、ナチスにも踏み込んだ表現をするなど、これを自国オランダで手を付けたヴァーホーヴェンにまず拍手(出来る時代になったとも)。

組織的な側面と、属する"人"の心理を綯い交ぜにする事なく描くのは、僕ら日本人が思う以上に、勇気が要ったと思う。

本作が歴史史観のドラマではなく、サスペンスとしてのエンターテインメント要素を強く盛り込んだのは、その点で描き易くする為でしょう(正に手練れ)。

最近では、どこぞの政権の無知無教養さへのカウンターもあってか『ハンナ・アーレント』の大ヒットや、それに伴いアドルフ・アイヒマンの『スペシャリスト』が復活再販するなど、画一的な歴史史観を再考する動きがありますね(ハイデガーの再評価もソレかな)。

命令における人の機械的な感情、組織外に居てさえも、圧力(空気)により非人道的な働きかけに加担してしまう恐ろしさ。

悪の中の"良心"、良心の中の"悪"、組織という理性を超えた装置の中に追い込まれた時、自分はどういう判断が出来るのか……良心的でありたいものですねぇ(−_−;)

脱線しましたが、楽しみながらも考えさせられる良い作品です。
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