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バットマン リターンズのmasatのレビュー・感想・評価

バットマン リターンズ(1992年製作の映画)
3.5
何という暗い映画だ。
映像も暗ければ、登場人物も、悪人はもとより、正義の味方であるべき男も、自閉症で暗い。
こんなどうしようもない人々の群像を、お得意の人工的な世界観を持って、美意識まで高めてしまったのだから、ティム・バートンは凄いと言うか、羨ましい限りだ。
そして、世界観のみならず、ここに湧き上がり、溢れる“恨み”にも近い、その鬱屈した心情を、見事にその人工的な世界観の“心”として、支えにした。その支えが、視覚的にも感情的にも、見事な調和力を発揮し、感動的なスペクタクルを魅せるのだ。
だから、感動するのである。

そして、それを受け入れた時代も、凄いものだ。豊潤な80年代を通過した90年代初頭だけのことはある。

ペンギンやキャットウーマンに押され、まるで成っていないクリストファー・ウォーケンが笑える。いや、あの名優を抑えるほど、監督の愛情が、コウモリも含めた醜い者へと注がれているのだ。

公開当時、渋谷パンテオンの大画面で観た時には、闇を跋扈する醜い者たちの心情が、映像のドス暗さと言う物理的な視覚要素と相まって(兎に角、フィルムの焼き加減含め、暗くて暗くて)失明するか!?とさえ思ってしまうほどに感動したものだが、それから30年、もっと醜いものを観てきたからだろうか、圧倒感は損なわれていた。
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