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バットマン リターンズのTのネタバレレビュー・内容・結末

バットマン リターンズ(1992年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ティムバートンが好きなので、ゴシックファンタジーっぽさが前作より強くて大変良かった。

ジョーカー(2019)を除けばティムバートン版がバットマン関連で初めて見るシリーズなので他との比較がまだできないけど、ペンギンとキャットウーマンの事情が丁寧に描かれているので、バットマンやジョーカーより入れ込んでしまった。

冒頭の流された赤ん坊が辿る水路を追っていくところは、それだけで映画がペンギンに寄り添っているようでいい。
市長になりたいとか女を侍らせたいとかはペンギンのキャラに合ってるのか分からなかったけど、大人が仮面舞踏会で遊び呆けてる隙に長男を攫うというのはまさにペンギンらしい気がする。子どもを放置する大人にこだわってる。
サーカス団が夜中に子どもを(特にわざわざ長男を選んで)攫うというのはおとぎ話っぽくてすごくいい。

ブルースも両親を失ったからペンギンに一瞬共感する。
マックスも極悪非道な実業家に見えて、舞踏会で息子が攫われそうになった時に自分が身代わりになる父親としての顔を見せる。
周りにそれだけの影響を与えるペンギンの生い立ちが描かれてるのがいい。



キャットウーマンについては、セリーナがキャットウーマンになるまでが丁寧に描かれていて良かった。
優秀なセリーナの発言は"しつけの悪いお茶汲み"として男性たちに嘲笑される。
恋愛よりも仕事が大事と言いながら留守電を聞くと、仕事を理解してくれない母親や、"女らしさ"を引き立てる香水の宣伝しかない。
猫と友達のように暮らす優しい想像力を持ったセリーナは、マックスに突き落とされたことで狂気に踏み込む。
家にあった女性らしいもの(ぬいぐるみ、ピンクの壁紙、猫のTシャツ、ドールハウス)をめちゃくちゃにし、真っ黒なツギハギだらけのスーツを身にまとう。

キャットウーマンって他のシリーズでも女性にかかる圧迫感によって生み出された感じで描かれるのかな?

強姦魔が女性を襲うところに現れて、もちろん強姦魔を倒すんだけど、襲われていた女性に対しても「スキがありすぎる」と釘を刺す。昔の自分みたいで苛立ったんだろうか。全ての女性は戦うべきとする第二波フェミニズムの雰囲気。

ショッピングモールで遭遇した警備員に舐められて、「女は寝るか殺すかだけ?」と辟易する。ペンギンにも結局全く同じように扱われる。
実はブルース/バットマンとも寝るか殺すかの関係になってる。女性を男性の道具としてしか見ない風潮に対する怒りにも共感するけど、実はセリーナ自信もどちらかの関係性しか経験がないから、それ以外の人付き合いができないのかも。
二面性を共有するブルースとなら通じ合うものがあったかもしれないのに、真に心を通わせることより戦うことを選んでしまった。新しい関係性に戸惑ったんだろうか。

キャットウーマンとバットマンの2人が交わした言葉を素顔で交わした瞬間に2人が正体に気づくの良かったなあ。
「ヤドリギは食べたら危険だ」「でもキスは時には命取りだ」
あんまり意味は分からないけど。

前作でもこういう場面があった。
「月夜に悪魔と踊ったことはあるか?」というジョーカーの決め台詞は、実はジャックの時代から使っていたもの。
ブルースは両親を撃った犯人もこれを言っていたことを思い出す。
これでジョーカーに対する運命的な因縁が決定される。
こういうのいいねぇ…。


前作より今作の方が好きなのは、悪役たちが悪役になった所以が丁寧だったところだと思う。
逆にジョーカー(2019)があまりに良すぎることを再確認した。


いくら正義を貫いていても、人知れず暗闇で行っている限りは誰にも信じてもらえないというのは、「ダブルフェイス」を思い出した。
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