皿鉢小鉢てんりしんり

バットマン リターンズの皿鉢小鉢てんりしんりのレビュー・感想・評価

バットマン リターンズ(1992年製作の映画)
4.5
6年前に見た時と全く印象変わらず……ペンギンがめちゃくちゃ沁みる。そしてキャットウーマンはさっぱりよくわからない(だが、それがいい……)
ペンギンはもう、頭も悪ければ腕っぷしも全くもって弱いというのが不憫で仕方がない。利用されて騙されて罠に嵌められて、部下に見捨てられ、手が不自由だから自分で戦っても全く勝てない。誰よりも強いのは世界への憎悪と、自己への異常なコンプレックスだけ。
「うらやましいか、マスク野郎!俺はホンモノの奇形だ!」とバットマンに言い放つ凄まじさ。
大量のペンギンを前に、「男も女も関係ない!どいつもこいつも皆殺しにしろ!」という演説がほんとに心に響く。最後の最後の「ちくしょう!オモチャの傘か……」も素晴らしい。絶対に敵わない世界そのものと最後まで戦い抜いた孤独なフリークスの姿にティムバートンの魂が宿っている。
ペンギンの動向をいちいち実況する無表情の青白い女が、またいかにもバートンの趣味らしくてよろしい。そのまま闇の中にスッと消えていなくなる。

対してキャットウーマンのことは全然よくわからないのだが、仮面舞踏会で拳銃取り出してクリストファーウォーケンを撃とうとする時の、色んな感情が極まってる女の顔が素晴らしい。
ミシェルファイファー、完璧と思う。こんな複雑なキャラクター、絶対再現不可能だし、『バットマンリターンズ』以外でちゃんとキャットウーマンを説得力持って描くのは不可能だと思われる。愛し合っているはずなのに絶対に一緒になれない悲恋、そして男の側はなぜ一緒になれないのかさっぱり分からない。三者三様誰も救われない物語にメリークリスマスと言って締めくくるラストに、今さらながら傑作と呼ばれる映画は格が違うと思った……