めしいらず

八つ墓村のめしいらずのレビュー・感想・評価

八つ墓村(1977年製作の映画)
2.7
おそらく横溝正史作品で一番人気が高いだろう原作小説を映画化した77年野村芳太郎版。原作はミステリとして実は割と粗めで、それよりは冒険小説的、恋愛小説的な味付けが人気の所以だろうと思ったけれど、本作ではミステリ要素をほぼ切り捨てて(何せ名探偵登場の場面自体が異様に少ないっ)オカルト的ホラー的な空気作りを優先しているよう。それを好むか好まざるかによって評価が分かれそう。中盤まで田舎の土着描写が丁寧で個人的には健闘していたと思うけれど、終盤の鍾乳洞内の殺人犯と主人公のホラーテイストな追いつ追われつが幾ら何でもやり過ぎで、どうしても馬鹿らしく見え白けてしまう。また大仰な演出(白塗りだとか例の「祟りじゃー!」だとか)や説明的な会話(市川崑なら巧みに避ける)も幾分興ざめではある。ただ”尼子の落ち武者殺し”と、実際にあった「津山三十人殺し」事件に想を得た”多治見要蔵の三十二人頃し”での酸鼻を極めた画作りには気迫が込もっていて圧倒的。原作からそのまま抜け出たかのように要蔵になり切った山崎努の怪演が光る。いつも通りに全く事件を止めようとしない名探偵金田一耕助を演じた渥美清については、洋装ではあったけれど横溝自身がイメージする金田一像には最も近かったのだとか。
30年ぶりの再鑑賞。市川崑の「犬神家の一族」や「悪魔の手毬唄」に比べると相当に分が悪いけれど、同じ市川による96年版よりは断然ちゃんとしている。
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