喪黒もぐちゃん

ピアニストの喪黒もぐちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

ピアニスト(2001年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

衝撃的なホラー作品。
やはり一番怖いのは、幽霊でも怪獣でもなく、"人間"である。

誰しもが自分の中に、他人には一切見せる事ができない"変態性"や"歪んだ性癖"などを実は持っている。そしてそれを自覚できてる人間も実は多いかもしれない。
ただし、だいたいの人間はその"変態性"や"歪んだ性癖"などの秘密を公にアウトプットする事は死ぬまでしない事のほうが多いだろう。

そんな秘密を相手に打ち明けたとき、秘密を曝け出したことによる解放感から支配的になるが、実はこのとき相手にもその解放感は伝染していて、まるでミイラ取りがミイラになるように、相手にもその"変態性"や"歪んだ性癖"を感染させることになる。
いざ自分の望んでいた変態的行為を具現化されると、理想と現実の違いを思い知らされる。
手紙には「腹を殴って」「顔面を殴って」と自分で書いたくせに、本当に殴られると痛くて血も出て傷も残るので、「痛い!やめて!」と泣き喚く。

実際のところ、自分は変態性も歪んだ性癖も持っていない、ふつうの人間だったのだ。

後日の演奏会に来た彼は、何事も無かったかのように笑顔で自分に声を掛けてきて客席へ向かった。
どう考えても自分よりも彼のほうが異常なサイコパスである。
結局、彼を殺すために持ってきたナイフを出すタイミングすら与えてくれなかった。
仕方なく自分の胸を刺すが、悲しいかな、こんな小さなナイフでは浅い傷しかできず、死ぬことすらできない。

本当に怖い人間とは、自分で自分のことを『怖い人間』だと自覚できない人間である。
自分で自分のことを「変態だ」と自覚してる時点で、その人は本当のところは変態ではなく「変態っぽい自分を演じてる人間」というだけの、所謂"ふつうの人間"なのだ。