しろくま

陸軍中野学校のしろくまのレビュー・感想・評価

陸軍中野学校(1966年製作の映画)
3.8
《諸君は将来》
〝大学の総長にも会社の社長にもなれる立派な青年だが、その諸君にあえて前途洋々たる将来を捨ててもらいたいのだ。日本は今や支那事変に突入し、将来、世界を相手に戦うようになるかもしれない〟

戦争においてスパイの役割がいかに重要かを説く草薙中佐(加東大介)。日本のために身を捨ててスパイになってくれと言われて戸惑う三好次郎(市川雷蔵)ら18人の高学歴の若者達だったが…。

〝眠狂四郎〟シリーズで一世を風靡した往年の時代劇スター市川雷蔵さんのスパイ映画。雷蔵さんは、本作でもひたすらニヒルでかっこいいのだけど、あの〝007〟や〝ミッション・インポッシブル〟のように悪の組織と戦ったりしないので、スタイリッシュな展開も爽快感もないんだよなあ。

スパイ映画としては、こっちの方がリアルなのかもしれないけど、相手を騙して情報を手に入れる流れって、お国のためという名目がなかったら詐欺師と変わらないよね。それに、草薙中佐が語るスパイ養成学校への熱い思いに賛同して集う若者達って、どこか洗脳されているような危うい感じがして…。組織のために裏切り者を始末するのはテロ集団と変わらないし、決して報われることのない滅私奉公は超ブラック企業と一緒。

雷蔵さんは魅力的だし、ヒロインとの悲恋はグッとくるし、続きを見たくなるような終わり方だから、シリーズ化されたんだろうね。

視聴メモ:2024.06.29/076/角川シネマコレクション
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