マグルの血

羊たちの沈黙のマグルの血のレビュー・感想・評価

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)
4.7
連続殺人事件を巡って、美しいFBI候補生の女性と、天才精神科医であり猟奇的殺人鬼である男の交流を描いた話。

過去に鑑賞した記憶があります。観たかったんだよなーアマプラありがとう。

極上のサイコサスペンス。凄まじいインパクト。異常なまでに張りつめた緊張感。レクター博士とクラリスの巧妙かつ痛快な会話と心理戦。2人の存在感が最高なのです。
凶悪犯罪者に捜査協力を依頼する。そういった演出のフォーマットは本作で広まったように思うのですが、どうなんでしょう。

まずは、シナリオに隙がない。というか、説得力が凄まじいです。レクターの狂気、異常性の表現力の半端なさ。特異な存在であることをこれでもかと見せつけてくるんです。シリアルキラーの中でも特に魅力的なんじゃないかな。

対する若き捜査官クラリス。任務に実直。正義に燃える美しい女性。周囲の目や扱いに戸惑いながらも真摯にFBI捜査官としての役割を全うしようとする。事件の捜査のために出会ったレクターとの交流。
戸惑いや不安を隠しながら気丈に振る舞うクラリス。心のどこかでレクターに対して何らかの特殊な感情が芽生えているんじゃないかと思わせるような演技。

バッファロー·ビルの造形も素晴らしい。殺人の目的、キャラクターの背景。綿密かつ知的に構成されていて、非常に惹き付けられます。

かなり濃く、性的な差別思想や偏ったイメージを演出している点も素晴らしい。おかげで作品の異常性がより高まったと思います。
あと、雰囲気は「セブン」なんかも彷彿させますが、本作の方が公開時期もあり少し埃っぽいというか、カラッとしてる分息苦しさを私は感じる作品でした。

淡々と、かつ厳かにすすむサスペンスと思いきや、しっかり物語に起伏があって見応え抜群です。特に中盤の盛り上がり。下手なアクション映画の何倍もドキドキします。何度も繰り返し観たくなる名シーン。クライマックスも心臓飛び出るんじゃないかくらいの緊張感。不穏なエンディングまで、良くできた映画だなと感心。

アンソニー·ホプキンスとジョディ·フォスターという2大名優の掛け算。ジョディ·フォスターとんでもない美人なんですよ。そりゃこういう映画に抜擢されるわ。

どことなく官能的、変態的な超上質サスペンス。これはいつまでも色褪せない名作です。
考察の余白が広大で、有識者はどこまでも深く掘れる作品なんだろうと思います。私には無理です。

今月グッとくる映画観れてなかったので良かった。

2024年 52本目
マグルの血

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