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羊たちの沈黙のpicaruのレビュー・感想・評価

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)
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【沈黙と悲鳴の話】

『羊たちの沈黙』観ました。

ミステリー映画の名作。
第64回アカデミー賞では作品賞をはじめとする主要5部門を独占したという。

前情報は何もなしで鑑賞した。
“羊たちの沈黙”というどこかファンタジーなタイトルが、猟奇的な事件のどこに着地するのか、追いかけてみたくなった。

ここがすごかったんだよ。

言いたい。どこが、どのようにすごかったのか、ちゃんと説明したい。

だけど、これは、ミステリー映画なのだ。
どこを切り取ってもネタバレになってしまいそうで、なかなか切り出せない。

ジョディ・フォスターが美しかったんだ。

それしか言えない。
.....いや、それすらもネタバレになってしまうのだろうか?

ジョディ・フォスターが演じたのは連続殺人事件を追うFBIの訓練生、クラリス・スターリング。
事件解決の手がかりを得るため、犯罪者として収監されている精神科医のハンニバル・レクターを観察する。

見えるものと、見えないもの。
一刻も早く犯人を探し出そうとする我々の焦りは、見たいものだけに執着し、かえって真実から遠ざかってしまうだろう。

人間の光と、闇。
常軌を逸した殺人犯に対して、同じ生き物とは思えなくなってきた頃にも、誰の心にだってある暗部、つまり、根本に目を向ける余地さえあれば。

性的倒錯と、暴力。
映画の行方も感情もコントロールが効かなくなった今、この殺人事件を犯人よりも楽しんでいるのは、静寂に狂気を潜めたハンニバル・レクターかもしれない。

事件の謎が深まるほどに、“羊たちの沈黙”の真意がじわじわと浮き上がってくる。
タイトルの色が移り変わっていく様をただただ見つめる。
それだけでもこの映画を観る価値はあると気付いてしまったから。

最後の最後まで、油断できない。
思わず声を上げてしまいそうで、そのたびに息を呑んだ。
声にならなかった悲鳴は、沈黙よりも恐ろしい。
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